日本に居住している20歳から60歳未満の方は、国民年金に加入することが義務付けられています。そのうち20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方など、第2号被保険者、第3号被保険者でない方を第1号被保険者と呼びます。

国民年金の保険料は、本人または保険料連帯納付義務者である世帯主・配偶者のいずれかが納めることになり、国民年金の支払いにも期限があるのです。この期限を過ぎてしまうとどうなるのか、把握しておいたほうがよいでしょう。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき、国民年金を未納や滞納した場合にどうなるのか、支払えない場合の対処方法についてご説明いたします。

目次
国民年金の保険料を未納・滞納し続けた場合どうなる?
財産差し押さえまでの流れは?
国民年金の保険料の支払いに困ったらどうする?
まとめ

国民年金の保険料を未納・滞納し続けた場合どうなる?

まず国民年金保険料の納付期限は、「納付対象月の翌月末日」です。この期日までに国民年金保険料が納付されていない場合、日本年金機構より納付勧奨を受けることになります。

納付勧奨は日本年金機構職員が実施するほか、電話や文書による納付の案内が民間事業者経由で行なわれます。督促状で指定した期限までに、未納の国民年金保険料が納付されない場合、財産の差し押さえを受けることになるため、非常に重いペナルティといえるでしょう。

また、被保険者が支払いに応じない場合には、世帯主及び配偶者など連帯納付義務者に対しても財産の差し押さえの対象になります。差し押さえにならなかったとしても、督促状で指定した期限までに未納の国民年金保険料が納付されない場合は、延滞金の支払い義務が生じるため、必ず期日までに支払いが必要です。

財産差し押さえまでの流れは?

上述した通り、期日までに納付されていない場合には、日本年金機構より納付勧奨を受けますが、その納付勧奨から差し押さえまでの流れは以下の通りです。

督促

国民年金保険料を支払う能力があるにもかかわらず、複数回の納付勧奨も無視し続けた結果、国民年金保険料が納付されない場合には、日本年金機構から最終催告状が送付されてきます。

最終催告状に記載した指定期限までに未納の国民年金保険料の納付が必要です。期限までに納付されない場合、更に督促状が送付されます。督促状には、納付に関する指定期限が記載されていますが、督促状は被保険者の連帯納付義務者に対しても送付されることになります。

差し押さえ

督促状で指定した期限までに未納の国民年金保険料が納付されない場合に、財産の差し押さえが実施されることになるのです。被保険者に連帯納付義務者がいる場合、連帯納付義務者に対しても財産の差し押さえが行なわれます。

督促状を無視していると財産調査が入り、そして差し押さえ予告が送られ、いよいよ財産が差し押さえられることに。国民年金保険料強制徴収による差し押さえになるには、いくつかの条件があり、差し押さえ対象者の年間所得金額が300万円以上で、かつ7か月以上保険料が未納の方が対象になります。差し押さえの対象となる資産は、預金口座や有価証券、不動産、生活必需品以外の動産です。

国民年金の保険料の支払いに困ったらどうする?

国民年金の未納が続くと、財産の差し押さえと延滞税の支払いが発生してしまいます。そのような事態になる前に、支払いが厳しいと感じた場合には、国民年金の免除、猶予の方法が取れるかどうか、確認することが大切でしょう。

免除

保険料免除制度とは、本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下の場合や、失業した場合など、国民年金を納めることが経済的に困難な場合に、ご本人が申請書を提出して承認されると保険料の納付が免除になる制度です。

下記免除した金額に応じて、免除された期間は全額納付したときの年金額と比較して、それぞれの金額を受け取ることができます。

・保険料全額免除… 全額納付の場合の年金額の2分の1
・保険料の4分の3の免除… 全額納付の場合の年金額の8分の5
・保険料の半額免除… 全額納付の場合の年金額の8分の6
・保険料の4分の1免除… 全額納付の場合の年金額の8分の7

猶予

20歳から50歳未満の方で、ご本人や配偶者の前年所得が一定額以下の場合に、申請が承認されると保険料の納付が猶予され、これを納付猶予制度といいます。免除も納付猶予も、受給資格期間へ算入され未納にならずに済むための手段というところでは共通していて、免除も猶予も追納が可能であることが特徴です。

ただし、学生の方は免除も猶予のいずれも利用することができません。学生の方がこれらの制度を利用する場合には、学生納付特例制度を利用する必要があります。

注意すべき点として、保険料の免除や納付猶予が承認された期間は、年金の受給資格期間に算入されます。しかし、将来の年金額を計算するとき、免除期間は保険料を納めた時に比べて2分の1になって、納付猶予になった期間は年金額には反映されません。受給する年金額を増やすためには、保険料免除や納付猶予になった保険料を後から追納する必要があります。

まとめ

国民年金の納付は国民の義務であるため、それを守らない場合には、財産の差し押さえや延滞金の支払いなど、重いペナルティを受けることになります。ただし、学生の立場や、病気やけがなどをした場合、または事業の業績などが悪くなって、一時的な資金難の影響で国民年金が支払えなくなるかもしれません。

支払えないからと言って納付をしなければ、差し押さえのリスクが生じます。そうならないように、免除や猶予の申請を行なう事で、納付資金の余裕が生まれるまで支払いを繰り延べることも可能です。免除や猶予期間も将来余裕が出来た際、遡って納付をすることもできますので、支払いが困難になった場合には、すぐに最寄りの市役所や年金事務所にご相談をすることをお勧めします。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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