親は子どもの生活の面倒をみていることから、日頃より親から子に金銭などの財産を渡すことはよくある話です。そのため親から子に財産を渡すことに対して贈与税がかかるのかどうか疑問に思う人は、それほど多くはないかもしれません。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、親子間の贈与税がかかる場合とかからない場合についてご説明いたします。

目次
親子間でも贈与税はかかる?
親子間で贈与税がかかる場合・かからない場合とは?
親子間の贈与で使える控除とは?
まとめ

親子間でも贈与税はかかる?

贈与税は、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金です。たとえ、親子間の贈与であっても例外ではありません。よって、親子間であっても贈与により財産の受け渡しがあった場合、贈与税がかかることになります。また、贈与税の対象となる贈与財産は金銭に限らず贈与した財産全般が対象になります。

親子間で贈与税がかかる場合・かからない場合とは?

親子間の贈与であったとしても贈与税はかかりますが、場合によっては贈与税がかからないケースがあります。また、一見して贈与税がかかるとは思えないようなことにも贈与税がかかる場合もあるのです。例えば、以下のことが該当します。

(1)日常生活の生活費や教育費

親から子どもに、治療費・養育費その他、子育てに関する費用などの生活費や学費、教材費・文具費などの教育費に充てるために、財産を贈与した場合で、通常必要と認められるものについては、贈与税がかかりません。

ただし、生活費や教育費として受けたお金を預金したり、不動産や投資、趣味など、生活費や教育費とは関係のないものに充てている場合など、必要な都度直接生活費や教育費に充てていない贈与財産については、贈与税がかかることになります。

(2)年間110万円以下の贈与

贈与税には110万円の基礎控除があるため、年間110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。贈与税の申告も不要です。なお、贈与税の課税方法は、暦年課税が一般的には選択されますが、一定の要件を満たせば、相続時精算課税という課税方法も選択することができます。

この110万円の基礎控除については、暦年課税を選択した場合にのみ適用されます(※2024年1月1日以降の贈与に関しては、相続時精算課税を選択していても110万円の基礎控除が適用されます)。

暦年課税を選択した贈与額が年間110万円を超えた場合は贈与税がかかります。また、年間110万円以下の贈与であったとしても、定期預金の贈与とみなされると、贈与を毎年分割して行っていることになり、贈与税がかかる可能性があるので注意が必要です。

なお、110万円の基礎控除は贈与を受けた子どもの贈与額の合計が、年間110万円以下である場合に贈与税がかからないことを意味したものです。したがって、両親からそれぞれ110万を同じ年に贈与を受けた場合は、合計220万円の贈与を子どもが受けたことになり、年間110万円を超えるため、超えた110万円には贈与税がかかります。

(3)相続時精算課税を選択した累計2,500万円までの贈与

親子間では贈与する親が60歳以上、贈与を受ける子どもが18歳以上である場合に、相続時精算課税が選択できます。相続時精算課税を選択すれば、2,500万円までの贈与は贈与税がかかりません。一方で、親から一生涯に受ける贈与の累計が2,500万円を超えると、超えた分の贈与財産に税率20%の贈与税がかかることになります。

例えば、父親から年間1,000万の贈与を受けて、かつ1,000万円の贈与以外に相続時精算課税を選択した父親からの贈与財産が1,500万円を超えている場合は、父親から贈与を受けた財産が累計2,500万円を超えることになり、超えた分の財産に対して贈与税がかかります。

(4)親が子どもの借金を肩代わりした場合

贈与税は財産を受け取る以外にも、経済的利益を得たとみなされた場合には贈与税がかかります。例えば、親が子の借金を代わりに返済した場合、子は金銭を受け取ったわけではありませんが、借金の免除により返済義務がなくなった分、子どもは経済的利益を得たとみなされ、贈与税がかかる場合があります。

(5)高額な財産を安く譲ってもらった場合

例えば、美術品や宝飾品、自動車などの高額な財産を相場よりも著しく安価で親が子に譲った場合、贈与の取引とみなし、財産を受け取った子どもに対して贈与税がかかる場合があります。

親子間の贈与で使える控除とは?

親子間での贈与の場合、一定の要件を満たせば、贈与税が非課税となる場合があります。

例えば、以下の贈与が該当します。

(1)教育資金の贈与税の非課税措置

平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に、直系尊属である親から30歳未満の子どもが、贈与により取得した金銭を教育資金に充てるため、銀行等に教育資金管理契約に基づき、預入をした場合等で一定の要件を満たせば、1,500万円を限度して、贈与税がかからない制度があります。

(2)結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置

平成27年4月1日から令和7年3月31日までの間に、直系尊属である親から18歳以上50歳未満の子どもが、贈与により取得した金銭を結婚・子育ての資金に充てるため、銀行等に結婚・子育て資金管理契約に基づき、預入をした場合等で一定の要件を満たせば、1,000万円を限度として、贈与税がかからない制度があります。

(3)住宅取得等資金の贈与税の非課税措置

令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に、直系尊属である親から18歳以上の子どもに、自宅の新築や増改築等の資金に充てるため、金銭を贈与した場合、一定の要件を満たせば、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの金銭の贈与は贈与税がかからない制度があります。

まとめ

贈与税は個人から贈与により財産を取得した場合にかかる税金であり、たとえ扶養義務がある親子間での贈与であったとしても贈与税はかかります。

贈与税がかからないケースや、親子間での贈与の場合であれば、贈与税が非課税となるケースもあります。反対に一見して贈与と思えない事項に関しても、贈与とみなされ贈与税がかかる場合もあるのです。それらのことを理解して親子間の贈与を行い、贈与税の申告漏れや本来贈与税がかからない贈与に対して、申告及び納付をしないよう注意しましょう。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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