関西を襲った未曾有の大地震。父親の姿がとても大きく見えた
父親は優しく、でもどこか頼りない。相談事があると率先して母親に話していたという陵子さん。そんな陵子さんの考えが180度変わった出来事が起こったそうです。
「関西を大地震が襲いました。私は当時小学生で、地震だと認識する前にブラウン管のテレビが背中に落ちてきて、激痛で目を覚ましました。しばらくは布団に入って動くことができず、地震が止まってからも停電していたので辺りは真っ暗で、何もできない状態でただただ泣くことしかできませんでした。
そんな中、『大丈夫か!』と父親の大声が聞こえてきたんです。食器棚や冷蔵庫なども倒れていて、地面はガラスが散らばっていたのに、倒れた棚を越えて安全を確認してきてくれました。追って母親の声もして、すごく安心した記憶が残っています」
そこから父親は家族を守るために率先して行動を起こすようになり、父親の姿は頼れる存在に変わっていきます。
「震災で一番ケガをしたのは父親だったんです。震災直後には倒れてきた鏡台で顔を切っていて、本人も明るくなって鏡を見た時に、顔が乾いた血で真っ赤になっていて、びっくりしたそうです。
そこから父親は道路が寸断されていたので、身動きが取れるようにとすぐに原付バイクを買って、食料を確保しに行ってくれたり、水も止まっていたので、何度も避難所に水をもらいに行ってくれたりとすごく頼もしかったです。震災で家族の絆は強固なものになったと思います。でも、反抗期、思春期を経て、嫌いじゃないのに、家族なのに何を喋ったらいいのかわからなくなっていったんです」
思春期に彼氏、友達を優先するような生活の中、親との距離感は徐々に掴めなくなっていき……。
【~その2~に続きます。】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。