日本のお寺の境内には、神社が建立されているのをたびたび見かけます。反対に、神社の中にお寺や仏像が安置されていることもあります。このように日本人の宗教観は神仏習合の中で育まれてきました。「神様仏様」という言葉がありますように、日本人の心の中には同列で存在しているものだと思われます。しかし、葬儀における仏式と神式の違いは、その死生観にあります。いわば葬儀における祈りの目的の違いです。
この記事では「葬場祭は神式の葬儀」について、京都・滋賀で85年の歴史を持ち年間約6,000件の葬儀を施行する、葬祭専門企業・公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)がご紹介いたします。
もしもの時、その日の時に、この記事をお役立てください。
葬場祭とは
葬場祭(そうじょうさい)とは、故人と最後の別れを告げるもので、神式の葬儀の中で、一番大切な儀式。仏式での告別式・葬儀にあたります。仏式と同様、お通夜の翌日に執り行われ、神式ではお通夜を「通夜祭(つやさい)」と呼びます。葬儀の形式は、仏式も神式も似ているのですが、根本的な違いがその宗教観によるものです。
神式葬儀の考え方
神式の葬儀は、「神道(しんとう)」という日本古来の宗教観に基づきます。神道では、人は亡くなったら、すぐに家の守り神になると信じられています。つまり、仏式の葬儀のように亡くなられた人を供養したり、冥福を祈ったりするものではありません。
神式の葬儀の目的
神式の葬儀の目的は、大きく2つあり、「祖先崇拝」と「穢れ(けがれ)を取る」ことです。神道では亡くなられた方はこの世の役目を終え、神々の世界に戻って子孫を見守る守護神になるとされています。守り神になられたことを、祖先を含め崇めて、拝むことが葬儀の目的です。
また、神道では、死を「穢れ」と捉えており、穢れとは「気が枯れている状態」を示しています。葬儀は、これを元の状態、つまり日常に戻すために行うのです。
神式の葬儀・全体の流れ
神式葬儀には統一された形式のものはありませんので、一般的な流れを説明します。亡くなられた当日は、神棚を閉じ、遺体を北枕に安置し枕飾りをお供えし、遺体を清めて白装束で納棺します。
仏式の葬儀と同様に、一般的に2日間にわたり、葬儀を執り行う。神式ではこれを「神葬祭(しんそうさい)」と呼んでいます。神葬祭1日目が通夜祭にあたり、2日目が葬場祭となるのです。
葬場祭の流れ
神式の葬儀は、「穢れを取る」ためのものですから、穢れては困る神社で執り行われることは、滅多にありません。ご自宅か、葬儀場などにて営まれます。そして、亡くなられた方を神としてお迎えするために、神官が祭詞を奏上し、ご先祖様を含めて崇め奉ります。
手水の儀
「手水の儀(ちょうずのぎ)」は、神道の祭礼では一般的な儀式です。手と口に柄杓で水をかけて、清めてから入場します。実際の葬儀では水を用意することが困難なため、省略されることが多いです。続いて神官が入場し、参列者全員が着席をします。
修祓の儀
司会者による開会の挨拶のあと、神官は「修祓の儀(しゅうばつのぎ)」を行います。修祓の儀とは、参列者を大幣(おおぬさ)といわれる、榊の枝に麻と紙垂(しで)をつけたものでお祓いし、お清めする儀式です。お祓いを受ける時は頭を下げます。
奉幣・献饌の儀
「奉幣(ほうへい)・献饌(けんせん)の儀」は、故人にお供え物をする儀式です。奉幣は、幣帛(へいはく)、食べ物以外を備え、献饌とは、神饌(しんせん)、食べ物の供え物をします。このとき楽員による雅楽の演奏が行われています。
誄詞奏上
「誄詞奏上(るいじそうじょう)」とは、神官が誄詞(るいじ・しのびのことば)といわれる祝詞を奏上します。誄詞とは、生前の経歴や業績、人柄などをなるべく詳しく述べることです。故人の死を悼み、崇め残された家族の守り神になることを祈ります。
弔辞の拝受・弔電の拝読
参列者の代表が弔辞を述べ、送られてきた弔電を読み上げます。
玉串奉奠
参列者ひとりひとりが玉串を祭壇に捧げます。玉串とは榊の木の枝に白い紙をつけたものです。「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」の手順は、参列者の順番に神官から玉串を受け取り、榊の枝の根元側を右手で上から被せてもち、左手は上向きにして葉の下を支えます。玉串を手にして遺族に一礼をして、霊前に向かいます。霊前でも一礼をして、玉串を両手で右回りに回し、榊の根が霊前に向くようにして置き、二礼、二拍手、一礼をします。柏手は音を立てず手を合わせるだけの忍び手で行います。
撤饌の儀
「撤饌(てっせん)の儀」とは、奉幣・献饌の儀で献上したお供え物を下げる儀式です。神官が撤饌の儀を終えると、葬場祭が終わります。司会が閉会の辞を奏上し、閉式となります。
葬場祭が終わったら
仏式の葬儀と同様に、火葬場へ出向き、火葬を行います。これを「火葬祭」と呼びます。火葬が済み自宅、葬儀会場に戻りましたら、葬儀が無事終わったことを奉告します。これを「帰家祭(きかさい)」と呼びます。仮霊舎に霊璽と遺骨、遺影を飾り一同着席し、神官が祭詞を奏上し玉串奉奠を行い、一同拝礼をします。
葬場祭でのマナー
葬場祭における一般的なマナーとしては、仏式のものとあまり変わりありません。神式の葬儀において注意しておくべきマナーについて解説します。
服装のマナー
服装は仏式と同様の服装で問題ありません。ただし、神式の葬儀では、数珠は使いません。
祭祀料(お布施)のマナー
仏式の葬儀のお布施にあたるものが、祭祀料にあたります。一般的に、神式の祭典や儀礼における御礼という意味です。相場は神式葬儀の費用で30万~50万円とされています。儀式当日に包み、表書きは薄墨で「御祭祀料」もしくは「御祈祷料」と書き、水引は白黒で、切り結びか鮑結びのものを使います。
仏式では戒名をつけていただくのに、お布施とは別に戒名料というものが必要となります。神式の場合は、戒名ではなく、諡(おくりな)というものがつけられます。これは葬場祭前夜の遷霊祭の中で、ある一定のルールに従って、全員が命名されます。別に依頼しても費用が発生することもありません。
まとめ
日本人は常に同列に考えがちな、神様と仏様。葬儀の数では仏様の独り勝ちですが、漠然と「死して神となる」ということが、身に沁みついているように思います。亡くなったあの人はいつも見守ってくれている。自然とそう思って生活されている方も多いと思います。それがまさに神道の死の考え方なのです。
仏式と神式の葬儀の違いを知ることで、日本人の宗教観の深さを改めて感じていただけるのではないでしょうか。
●取材協力・監修/公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)
京都・滋賀で85年に渡り葬儀奉仕の道をひと筋にあゆんでいます。「もしも」のとき安心してお任せいただけるのが公益社です。
●編集/中野敦志(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com FB)