精神科医の和田秀樹さん(63歳)の新刊『シン・老人力』が話題を集めています。和田医師は停滞するニッポンを救うのは、高齢者の新たな力だと説きます。発売を記念して行なわれた「世界最高齢プログラマー」の若宮正子さん(88歳)との対談の一部を、全7回でお届けします。第7回は、日本経済の課題や高齢者の消費力などについて語り合います。
●対談を収録した動画は下記より視聴できます。
高齢者の欲しいモノが近くにない
和田秀樹(以下、和田) この「30年不況」と言われるものは生産性が足りない不景気ではなくて、慢性的な消費不足なんです。日本は30年成長しなかった代わりに、30年物価も上がっていない。
若宮正子(以下、若宮) そうですね。
和田 いわゆる「豊作貧乏」と同じ状態が続いているわけで、実は生産しないで消費だけしてくれる高齢者っていうのは、この「豊作貧乏」の救世主みたいなもんなんです。
若宮 なるほど。
和田 つまり高齢者に現役でいてほしいという話になった時、現役で働けという話にばかりなるけど、現役で消費してくれることが実は世の中の役に立っているわけなんです。
若宮 そうなんです! でも、この頃、少しずつ改善されてきましたけど、やっぱりコンビニやスーパーでなかなか年寄りが欲しいモノが手に入らないんです。
和田 そうそうそう。
若宮 私はホクホクした焼き芋が好きなんですけど、近くのスーパーにはないけど、なぜかAmazonにはあるんですね。
和田 ははは。
若宮 それから、うちは畳の部屋で座布団カバーがすり切れることがあるんだけど、これも近くにはないんですけど、Amazonではいろんな柄のものたくさんある。だから、ネットを使えばもうちょっと高齢者も好きなものが手に入ると思うんです。
和田 しかも家まで持ってきてくれますからね。
若宮 そうなんですよ!
高齢者が増えたことに対応しないのが問題
和田 ですから、そういう世の中になったんだってことを高齢者にも認識してほしいし、実はネットこそ高齢者向けの産業だと僕は思っています。
若宮 おっしゃる通りです。
和田 それで、日本の一番大きな問題点というのは高齢者が増えたことではなく、高齢者が増えたことに世の中が対応しないことだと思いますね。
若宮 そうです。今後、世界もだんだん高齢化していくわけですから、日本が(高齢社会の)一つのモデルを作れば、他の国にも貢献できますし、商売にもなるはずなんですよね。
和田 おっしゃる通りです。結局、高齢者向けのモノは古くて、若者向けは新しいというのはバカな思い込みだと思います。高齢者向けのモノが最新なわけだし、高齢者のほうがAIやロボットの恩恵を受けるわけです。
若宮 そうです。ですから、高齢者もね、もっともっと自分たちはこういうモノが欲しい。こういうモノが買いたいって、どんどん情報発信すべきなんですよね。
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●和田秀樹医師の新刊『シン老人力』の情報はこちらから。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09389117
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。