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テレビやラジオ、雑誌などの各メディアで活躍中の放送作家・コメンテーター・コラムニストの山田美保子さん。著名人との交流も頻繁なだけに、気の利いた手土産を贈る機会も多くあるそうです。そんな山田さんに毎月、贈る側も贈られる側も心が躍る“とっておきの手土産”を紹介していただきます。

【心躍る! とっておきの手土産】
第19回 手間ひまとともに想いが伝わる手土産

文・山田美保子

「手土産」の極意が、「気が利いていること」であるとするならば、用意する側としては、手間と暇をかけるのがベストであるに決まっています。

頭ではわかってはいるのですが、なかなかそうもいかないもの。東海道新幹線での移動が多い私にとって、たとえば東京駅の『グランドキオスク』は、「助かるお店」ですし、大人数いるテレビ局のスタッフへの差し入れに相応しい小分けされた焼菓子などが揃う「便利なお店」でもあります。

でも、どうして、もう少し時間に余裕をもって家を出て『大丸東京店』に足を延ばさなかったのかと自己嫌悪に陥ることも……。ほんの10分くらいの差だと思うのですけれど、急いでいる朝はこれがなかなかできません。

そんなとき、いつも思い出すのが、「おすぎとピーコ」さんの、確か、おすぎさんのエピソードだったと記憶していますが、映画評論家の淀川長治さんの元へ「マロングラッセ」を持って行ったときの話。当時、「マロングラッセ」はもっともポピュラーな手土産の一つだったのですが、淀川さんはおすぎさんを𠮟りつけたのだといいます。手間暇かけて手土産を探して来なかったことが一瞬にしてバレて、おすぎさんはとても恥ずかしい想いをしたのだとか……。もしかしたら、お二人に共通する“美意識”に、当時のマロングラッセは反していたのかもしれません。

そういうことを防ぐために、日持ちがするお菓子などならば、何日か前に用意しておけばいいのではないかという声もあるかと思います。おっしゃるとおりです。ですが、次の出演のために用意していた手土産が違う人たちの元にいってしまう場合というのも多々あって……。実は現在ほぼ毎日、動物病院通いをしている私にとっては、獣医さんやスタッフさんたちへの差し入れになってしまうこともしばしばあるのです。

その精巧さとおいしさに驚きの『大黒屋製菓舗』のオーダーメイドの練り切り

そんななか、時間をかけて準備し、「あなただけのために」と用意した気持ちが必ず先方に伝わる最強の手土産に出会うことができました。それは昨年10月。2011年4月から出演してきた『ドデスカ!』(メ~テレ)の「いいね!わがマチQ」でのことでした。同コーナーのコンセプトは「東海3県のマチの魅力を再発見」で、番組ディレクターさんたちが愛知、三重、岐阜の東海3県の市町村に出向き、とっておきの情報をキャッチし、それを視聴者の皆さんやスタジオのコメンテーターにクイズ形式で紹介するのです。

その日は、愛知県知多郡東浦町にある、創業1804年の老舗『大黒屋製菓舗』からの出題でした。同店で代々続くのは、酒元饅頭や、愛知県らしい金粉入りの於大羊羹などの銘菓なのですが、「5年前からオーダーメイドの練り切りを200点以上作ってきた」のだとか。そして「マチQ」になったクイズというのが、「これまでの注文の中で、店主がもっとも驚いたオーダーメイド練り切りは?」でした。

『大黒屋製菓舗』の店舗

「マチQ」はいつも2択で、その日は、「ハンバーグ師匠」ことスピードワゴンの井戸田潤さんに因んで、選択肢は「ハンバーグ」と「チキン」の2つでした。正解は「チキン」。これが、カタチといい、焦げ目といい、照りの具合といい、食品サンプルの上をいくような出来栄えで、井戸田さんも私もビックリ仰天。なんでも、オーダーした方の御家族の中に、チキンがあまりお好きではない方がいらしたそうで、「でも、お祝いだから、せめて練り切りで……」と注文されたといいます。

「確かにそのオーダーは、お店の御主人も驚かれたでしょうね~」などとコメントをしていたところ、フロアディレクターが井戸田さんの前に箱をスタンバイ。コーナーを仕切る小松﨑花菜アナウンサーに促され、井戸田さんが蓋を開けてみたところ、今度はハンバーグの練り切りと、その脇には井戸田さんにそっくりな「ハンバーグ師匠」の練り切りが入っているではありませんか!

本物に見間違えるほど精巧にできた
ハンバーグの練り切り

井戸田さんが「ハンバ~~~~グ」と叫んだことは言うまでもありません。いや何が驚くって、こちらの焼き具合も前述のチキン以上に本物らしくて、肉汁が溢れてきそうな出来栄えだったのです。傍らのミニ“ハンバーグ師匠”もとってもかわいらしくて、本物の井戸田さんによく似ていました。

その後、小松﨑花菜アナウンサーが「井戸田さん、召し上がってみてください」と言ったのですが、井戸田さんは「え~? 写真撮ってからじゃダメ?」「どうしても食べなくちゃダメ?」「持って帰っちゃダメなの?」と渋ること3度。完成品のまま持ち帰り、新婚の奥様(蜂谷晏海さん)に見せたいのだろうな~という気持ちが隣に居てよ~く伝わってきました。

贈り手の気遣いや作り手の思いやりが忘れられない感動に

でも、テレビですから……、しかたなく一口食べた井戸田さん。その確かな味にも感嘆の声を挙げていらっしゃいました。番組では、時間や段取りの都合で、実物がスタジオに届けられたり、試食できたりする機会が極めて少ないのですが、この「オーダーメイド練り切り」は、実際を見て、触って、食べて見ないと感動が伝わらない! とも思いました。

「本当にあれはすごかった」「感動した」などと井戸田さんと喋りながらスタジオを後にしたところ、担当ディレクターが「実は美保子さんにもお土産がありまして……」と私に渡してくれた箱……。てっきり、練り切り以外の『大黒屋製菓舗』の詰合せでも入っているのだと思いつつ、有難く受け取り、楽屋で蓋を開けてみてビックリ!!!

我が家の愛犬、ミニチュアピンシャーたちの練り切り

なんと、我が家の愛犬、ミニチュアピンシャーが3匹、顔を寄せ合った「オーダーメイド練り切り」だったのです。特に中央の顔が、9年前、虹の橋を渡って行った“長女”ピンにそっくりで……。楽屋で号泣してしまいました。

でも、何より嬉しかったのは、井戸田さんだけでなく、私の犬の写真をブログで検索してくれて、オーダーしてくれた女性ディレクターの細やかな気遣いと、手間をかけて、それを形にしてくださった『大黒屋製菓舗』さんの久米寛則さんの思いやりでした。

そして、とにかくこの「オーダーメイド練り切り」は、食品サンプル以上に、本物にそっくりなのです。「食べるのがもったいない」とは、「オーダーメイド練り切り」のためにある言葉のような気がします。事実、私がいただいたモノはまだ冷凍庫に眠っています。現在、闘病中の2匹が完治したら、お祝いに食べるつもりです。“手土産”として私がもらったもののなかで、最大級のインパクトと愛情が感じられた「オーダーメイド練り切り」。ぜひ、手土産リストに入れていただければと思います。

山田 美保子(やまだ・みほこ)
1957年、東京都出身。TBSキャスタードライバー、フリーレポーターを経て、「カノッサの屈辱」「恋のから騒ぎ」や「踊る!さんま御殿!!」などの人気番組の放送作家として活躍。テレビやラジオのコメンテーター、コラムニストとしても活動中。

商品のお問い合わせ先
大黒屋製菓舗
https://www.daikokuya1804.com/

 

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