精神科医の和田秀樹さん(63歳)が高齢者の新たな可能性について綴った『シン・老人力』(www.shogakukan.co.jp/books/09389117)。読めば勇気と元気がわくと話題の同書から、高齢者がいつまでも若々しく自分らしく生きるために、「口グセ」にしてほしい言葉について、和田さんが紹介します。
文/和田秀樹
ささやかな吉兆を見つけて喜ぶ
気持ちが明るくなり、前向きになるには、ものごとに対してまず「いいこと」を考えることです。
どうなるかわからない結果についても、悪い想像ではなく、いい想像をする。そうすることで行動は積極的になり、考え方は楽天的になります。
これは脳にも心にもとてもいいことです。
おそらく人間は、経験的に「いいこと」を考えるメリットを知っている存在なのでしょう。明るい気持ちを保つために、言い伝えなどにしてさまざまな知恵を生活に持ち込んだのだと思います。
一例を挙げれば「茶柱が立てばいいことが起こる」。湯飲みの中にお茶の茎(くき)が縦になって浮かんでいる状態は、お茶を入れるたびに起こるわけではありませんが、非常に珍しいわけでもなく、ときどき見ることができます。
そんな些細(ささい)な出来事でも、「いいことがあるぞ」という吉兆と決めてしまえば、朝の一杯のお茶から、一日を気持ちよく過ごすことができるのです。
積極的で楽天的な人になれる
日常の些細な出来事を、「いいこと」の兆しと見るか「悪いこと」の兆しと見るかで一日はずいぶん違ってきます。
先を急いでいるとき、目の前の信号が赤になってしまった場面。いつもなら青信号なのに、急いでいる今日に限って赤信号となれば、ただの偶然でも「悪いこと」のように受け止めてしまうかもしれません。
不安なときには「悪いこと」と受け止めやすくなるものです。
こんなときは考え方を変えましょう。赤信号は「止まれ」「先に進むな!」ではなく「休め」「一息入れよう」という合図です。
こんな考え方もできます。
もし「いいこと」と「悪いこと」が半々で起こるのが人生なら「悪いこと」をすぐに忘れてしまう人は、結果として「いいこと」が増えてきます。つまり積極的で楽天的な人になれるのです。
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。