人は亡くなったあと、自分の姿を見ることはありません。しかしながら、家族や親しい人たちに見送られるとするならば、最後の自分の姿は生前のままであって欲しいと多くの方が願うのではないでしょうか?

「エンバーミング」という遺体の保全技術が日本に入ってきて久しいですが、実際はどんなことをされるのか、理解していない方も多いことと思います。この機会に、エンバーミングの知識を取り入れてみてはいかがでしょうか?

この記事では「エンバーミングとは」について、京都・滋賀で85年の歴史を持ち年間約6,000件の葬儀を施行する、葬祭専門企業・公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)がご紹介いたします。

もしもの時、その日の時に、この記事をお役立てください。

目次
エンバーミングとは
エンバーミングの役割
エンバーミングが必要なケース
エンバーミングの手順
エンバーミングの費用
まとめ

エンバーミングとは

エンバーミングとは、遺体を長期保存するために施される処置のこと。一般に10日から2週間程度、安全に保存できるとされています。

エンバーミングの起源

エンバーミングの起源は、古代エジプトの時代といわれています。その後、ヨーロッパにおいてホルマリンの技術導入が進み、医療の観点で発展し、現在の形となりました。葬儀の目的で使われるようになったのは、アメリカの南北戦争だといわれています。戦死者を埋葬(土葬)するために、故郷まで遺体を持ち帰らなければならず、遺体の保全のために使われました。

日本では、1988年に国内でエンバーミングセンターが設立され、1995年に発生した阪神淡路大震災で注目されるようになりました。2000年には1万件の施術が行われ、2022年には7万件を越えています。

エンゼルケアとの違い

遺体への処置と聞いて連想するのが、「死化粧(しにげしょう)」。病院や介護施設で行われる死化粧は、「エンゼルケア」と呼ばれ、病院では死後の措置として看護師が行ないます。介護施設で亡くなられた場合は介護職員が行ったり、自宅で亡くなられた場合は、葬儀会社のスタッフが行なったりすることもあります。

エンゼルケアは、化粧だけではありません。目や口を閉じ、全身の清拭と着替え、口腔ケアや鼻腔内ケア、洗髪や髪のブラッシング、お顔のクレンジングや髭剃りなども行う場合もあります。

エンゼルケア・死化粧は、葬儀に際し遺体の顔つきを整えることが目的ですが、エンバーミングはご遺体を衛生的に保全することが目的です。その点が違いとなります。

エンバーミングの役割

エンバーミングにはどのような役割があるのでしょうか? 大きく3つの役割があります。

感染防御

多くの遺体には細菌が存在しており、死亡したら細菌も死滅すると思われている方が多いですが、宿主が死亡しても、細菌は生き続けます。逆に遺体を栄養源として急速に増殖するのです。よって、遺族や親族などお別れをする方々や、医療関係者などへの感染を防ぐために、全身の消毒と殺菌処理を行います。

腐敗防止

死後間もなく、遺体は体内から腐敗が進みます。エンバーミングを施さない場合は、大量のドライアイスを入れて腐敗を抑制。1回で10キロを目安に使います。夏場は2日間で40キロものドライアイスを使うことも。エンバーミングを施すことにより、腐敗の進行を遅らせることが可能です。

遺体の修復・化粧

長い闘病生活で、痩せてしまい生前の面影がない場合、エンバーミングでは、瘦せこけた顔をふっくらさせることもできます。あるいは、事故で顔に損傷を負ってしまった場合なども、特殊な技術である程度の修復が可能です。また、思い出の洋服に着替えるなど、元気だったころのお姿でお別れすることが可能になります。

エンバーミングが必要なケース

日本の葬儀は99%以上が火葬です。遺体の安置期間は、長くても3日くらいといわれています。どんなケースでエンバーミングが使われているのか見ていきましょう。

葬儀までの日数が長い場合

近年、高齢化社会により火葬場が混雑し、葬儀後すぐに火葬ができない状況となっています。火葬まで時間がかかるため遺体保存のため、エンバーミングの需要が増えているというわけです。

ゆっくりとお別れをしたい

すぐに火葬するのではなく、遺体の近くでゆっくりとお別れしたいという時に、安全な状態で長く一緒にいることができます。

海外で亡くなられた場合

海外で亡くなられた場合は、日本に遺体を搬送しなければなりません。海外からの搬送ではドライアイスが使用できないため、エンバーミングが施されます。

また、外国の方が日本で亡くなられた場合、その遺体を飛行機で搬送する際に、エンバーミングを条件としている国や航空会社があります。

元気だったころの姿で留めたい場合

闘病生活が長いとか、事故での傷の状態により、生前の姿とはかけ離れた状態になられることも。元気だったころの姿でお見送りしたいという遺族からの希望で、エンバーミングを施します。

エンバーミングの手順

日本でのエンバーミングは、「エンバーマー」という資格保持者によって行われます。この資格はIFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)の試験に合格した者に与えられるものです。施術は、その資格を持っている者だけが可能。エンバーミングができる施設に遺体を搬送してから施術を行います。また、エンバーミングを施すには、基本的にご家族の署名による「依頼書」が必要です。

遺体の消毒、洗浄と洗顔や洗髪

遺体の状態を確認し、表面の洗浄や消毒を実施。洗顔や洗髪、髭剃りや産毛処理を行なったのち、保湿剤を塗って、顔をきれいに整えます。

防腐液の注入

遺体に小切開を行い、そこから血管経由で防腐剤を注入して、血液と入れ替えます。

消化器官などの残存物の除去

消化器官に残っている食物や、呼吸器官に残っている痰などの残存物や、体液を吸引します。

縫合、修復と全身洗浄

防腐剤を注入した小切開箇所を縫合して、全身の損傷個所を確認。必要な個所があれば修復して、再度全身を洗浄します。

衣装の着付けと死化粧

衣装を着せて、表情や髪の毛、顔の化粧なども施して完了です。

納棺

エンバーミングが完了したら、エンバーミングの施設から遺体の安置場所に搬送し、納棺です。 エンバーミングにかかる時間は一般的には3~4時間といわれていますが、遺体の状態によって多少変わってきます。

エンバーミングの費用

エンバーミングの費用は、IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)が基本料金として15~25万円と定めています。遺体の損傷状況などによって変動しますが、大きく変わることはありません。

まとめ

葬儀が終わって、息吐く暇もなく火葬されることに抵抗を感じる方もおられるでしょう。故人とゆっくりとお別れをしたいという場合には、エンバーミングが大きな味方となってくれると思います。

●取材協力・監修/公益社(https://www.koekisha-kyoto.com


京都・滋賀で85年に渡り葬儀奉仕の道をひと筋にあゆんでいます。「もしも」のとき安心してお任せいただけるのが公益社です。


●編集/中野敦志(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com FB

 

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