ドライブの行き先は、声優の家だった

典子さんが「家道楽」と軽くバカにした晶子さんの長野の家は、コロナ禍で、家族の避難所になった。

「都会の息苦しい生活を離れ、夫(60歳)と息子(30歳)、家族三人で快適に生活をしていました。それまで、夫との間に、いろんなすれ違いやわだかまりがあったのですが、コロナ禍で落ち着いて話して、改めて家族になったようにも思います」

息子もコンサルティング会社に勤務しており、コロナ禍はリモートワークだったという。晶子さんに典子さんの家族について聞くと、「くせがあるご主人みたいですよ」と言う。彼女の夫は、外食を極端に嫌い、典子さんが作ったものだけを食べるので、おちおち外出もできないとこぼしていたことを思い出してくれた。

「私が典子さんに老後は長野の家で暮らす話をしたのも、彼女が“アヤツ(夫)が定年になったら、全部ぶんどって離婚する”と言っていたからです。彼女のご主人は、食事にうるさいだけでなく、ハウスダストアレルギーでこまめな掃除が必須。また、夜の生活の強要をしたり、息子さんが進学した専門学校の費用を出さなかったりして、今でいうモラハラだったんだと思うんです」

筆者はこれまで、推し活にハマった人、100人近くに話を聞いてきた。そこで気づいたのは、家庭環境や職場の環境に何らかのひずみがある人が多いことだ。強いコンプレックスや、機能不全家族の中で生活している人が目立つ。

「確かに……私の周りの推し活にいそしむ人も、そういう人が多いかもしれない。現実が満たされないから、疑似恋愛を楽しんでいるというか。典子さんとは別のお友達もいるんですが、彼女はある声優さんの推し活をしているんです。その人に茅ヶ崎の農作物販売所へのドライブに誘われて行きました。すると、途中で住宅街に入り、ある家の前をぐるぐる回るんです」

彼女は路上駐車をして、10分ほど帰ってこなかった。車で待機してた晶子さんに「ごめんごめん」と帰ってきて見せた写真は、推し活をしている声優さんの自宅の壁を触る手、家や窓の写真だった。

「窓辺のカーテンの柄、軒先にある傘や子供用の自転車なども生々しかったですよ。相手にとってもすごく気持ち悪いと思うんですよ。犯罪スレスレだとも思うし……すると、“この人は、ずっと妻子がいたことを隠していたから、このくらいいいのよ”と。別に私はいい子ぶっているつもりもありませんけれど、俳優とファンの人生は全く別じゃないですか。俳優は虚構を現実に見せるのが仕事で、そこに魅せられたのなら、バックヤードである私生活を見たくはならないと思うんですけどね」

【推し活をしている友達への嫌悪感はつのっていき……その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。

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