バカのふりがうまく、可愛いから誰もが夢中になる
香織さんは努力が苦手で、楽をしようとするところがあった。短大を卒業して一般企業に就職しても、遅刻とミスが多く、3か月で解雇されたという。
「学校時代は権力者の男性に取り入ればなんとかなりますが、社会人になったらそうはいきません」
真理子さんに、「香織さんが、男性にどのようなことをしていたのですか?」と聞くと、想像以上の答えが返ってきた。
「もう、時効で、相手も亡くなっていると思うので……まずは、小学校の先生に体を触らせていたこと。香織は大人っぽい体つきをしていたこともあり、その現場に居合わせたときはぎょっとしました」
相手は40代の妻子がいる男性教師だった。その教師は、熱血で知られ、子供への鉄拳制裁を辞さなかった。学年主任として保護者からも信頼を得ていたという。どの子に対しても厳しい態度を崩さないのに、香織さんには優しく、3年生から6年生まで担任だった。
「たぶん、その先生が手心を加えたから、私立中学校に合格できたんだと思うんです。それを考えるようになったのは、私が小6の5月に、体育倉庫で香織と先生が一緒にいるところを見てしまったからです。あの日、ポートボールの練習をした後、石灰でラインを引く道具をしまい忘れたことに気付き、放課後に置きにいったんです。そこに香織と先生がいて、けっこう本格的に体を触り合っていたんです。子供ながら見てはいけないものだと思い、心に蓋をしました」
おそらく、香織さんは真理子さんに見られていたことに気付いていたのではないか。そして、真理子さんは、中学校、高校と有力な先生に取り入って、体を預けていたのではないかと推測する。
「勉強も苦手で遅刻も多いから、留年や退学になってもおかしくない。それなのに進学もできた理由は……やはりそうとしか考えられない。香織は賢いからバカのふりがうまい。それに可愛いから誰もが夢中になるんです」
社会人になっても学生時代と同様に、すべきことから逃げていたら、行き詰まる。
「実家もお金があったし、金持ちの男と付き合っていたし、30代前半まではうまくいっていたと思いますよ。あるとき、香織の家の車庫に真っ赤なイタリア車が停まっていたことがあったんです。“お父さんが買ったの?”と聞くと、“彼氏に買ってもらった”と」
後日、彼氏を紹介されると、62歳の会社経営者だったという。
「私も若かったから、そういう香織が面白く、32歳で私が”できちゃった結婚”するまでは、友情は続いていたと思います」
【「商社マンと結婚!? 貧乏生活は無理」と言われた……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。