シスターフッド……女性同士の連帯が叫ばれる昨今、実際の友情をテーマにライター・沢木文がインタビューからわかったリアルを紹介する連載。今回のテーマは「借金」だ。

新型コロナウイルスが五類に移行したことにより、日常生活が戻ったと感じている人も多いが、その爪痕は深い。厚生労働省は、2023年4月に「コロナ特例貸付」の返済率が18.6%にとどまっていると発表。これは、国がコロナの影響で収入が減った世帯に、無利子で資金を貸し出す特例貸付制度だ。返済期限は2023年1月だったが、8割以上が返していない。また、返済の免除や猶予などの手続きがされないままという割合は、44%にのぼり、その総額は約1.4兆円以上だという。東京都に住む真理子さん(62歳・パート)は、「借金する人は返さない。香織(62歳)もそう」と語る。

カンニングの片棒も担がされたこともあった

真理子さんと友人の香織さんは、23区内にある実家が隣同士。5歳から55年以上関係が続いているが、借金の問題から友情が破綻しかけているという。

「地味な私と、人目を引く美貌を持つ香織は、なんとなくウマが合い、5歳のころから一緒に過ごしていました」

小・中・高と学校も同じだった。2人の進学先は、都内にある中堅の中高一貫女子校。堅実な校風で知られる伝統校だ。成績優秀だった真理子さんは、「勉強をせずとも行ける」という基準でその学校を選んだが、香織さんは「やっとのこと」で入ったのではないかと言う。

「だから、いつも赤点をとっていました。私にノートを見せてと言ってきたり、カンニングの片棒を担がされたこともありました」

努力が嫌いで、責任転嫁をすぐにして、ワガママ……そんな香織さんとの友情が続いたのは、彼女の性格が底抜けに明るいから。

「人間も虫と同じで、明るい方に寄っていってしまうんですよ。あの明るさと強引さは、なかなかないです。いろいろ腹が立つこともあるのに、顔を見るとパッと消えてしまう」

卒業後、真理子さんは名門私立大学へ、香織さんは短大へと進学したものの、家が隣なので交友関係が密だったという。

「2階の私の部屋の窓の向いが、香織の部屋でした。お互いが帰っているとすぐにわかるので、窓をこんこんすると、あの笑顔で“真理子お帰り”と言ってくれたんです。お酒が飲めるようになってからは、窓越しに飲み会をしたことも」

2人をつなげたのは、真理子さんの父親の厳しさだった。門限は21時で、友人からの電話は取り次いでもらえなかった。

「当時はスマホもポケベルもありませんから、心配だったんだと思いますよ。だから窓から香織の部屋に行き、ディスコに行ったことも。香織にはいつもアッシー君がいましたから」

鏡張りのディスコ、夜通しやっているレストラン、サーファーのボーイフレンド、ベルサーチのドレス……80年代の東京の夜は輝いていたという。

「中でも目立ったのは、香織でしょうね。テレビ局の人とか、芸能事務所の人とか、周りにはいつも男性たちがいました。私はいいように使われていたと思いますよ」

香織さんは、しつこく言い寄る男たちに対し、「真理子が待っているから」と断っていた。

【小学校の先生との秘め事も知っているから……次のページに続きます】

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