夫の稼ぎと義両親からプレゼントされた家での暮らしは軟禁と同じ
恵美さんは離職する前に正社員からパート勤務に変更して働いていたことがある。それを離職へと決定付けさせたのは義両親からの説得だった。「家賃はいらないから」の一言に夫は「ありがとう」と即答だったという。
「以前のように効率良く働くことができずに、私としても申し訳ない気持ちがありました。上司や社長と相談してとりあえずパート勤務にして週に2~3日ほど働くことにしてもらいました。私もそのほうが気持ちが楽になったのでよかったのですが、お金が本当に保育園代ぐらいにしかならなくて。お金の管理は夫がしていたので、そこで『厳しいね』とだけボソッと言われました。
そして、その後に義両親が家に来て、家賃のことをいらないと言われたんです。あぁ、私の稼ぎを義両親に伝えられたんだなって思いました。そこで『これで働く必要はなくなったでしょう』と言われて……。働いているのはお金だけのためじゃないのに、それを伝える気力さえ、そのときにはもう残っていませんでした」
その後、恵美さんは専業主婦に。夫からは“養ってやっている”という圧力を感じるようになった。夫婦での決め事に際しての話し合いは一切なくなり、決定事項を伝えられるだけになっている。
「夫の稼ぎで、義両親からプレゼントされた家で暮らしている。私の両親は、義両親が建ててくれた家だからと遠慮してなかなか遊びに来てくれませんし、友人を呼ぶことも気が引けていました。
子どもが大きくなった今、夫が昇進して給料が増えたことでより一層私に働く意味がなくなってしまって、ずっと専業主婦のままです。ある意味恵まれた環境なのかもしれないですが、子どもが巣立った後、私の生きる意味がなくなりそうで怖いのです」
政府は育休制度の拡充を含めた“働き方改革”を掲げているが、男性の取得率は伸び悩んでいる状態。恵美さんの夫のように、そもそも育休制度を取得する気がない場合も多いのではないだろうか。家事育児は女性が行うものという意識も変わりつつあると言われるが、アンケート、今回の恵美さん家族にあるように、まだまだだという印象を抱いた。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。