家族でヨーロッパ1周旅行をした思い出

娘の発言は同僚の先生からの反感を集めてしまう。

「念願の幼稚園の先生になったのに、好きなピアノはさわらせてもらえず、下働きのようなことばかりをしていたそうです。それもわざと変な指示を出したり、待ちぼうけをくらわされたりして、“ママ、もう行きたくない”と言われました。園長先生にまで無視されるというので、私が直談判に行ったんですが、“は~ん、そうですか”みたいな対応。当時、スマホがあれば、あの動画を撮っていたのに」

娘は幼稚園を退職した後、半年間は家でピアノを弾いて過ごす。順子さんが知り合いに相談したところ、家でピアノ教室を開くことをアドバイスされた。1階の客間を改装し、門にピアノ教室の看板を掛けたが、問い合わせが1件もなく断念する。かつて、子供の習い事の定番はピアノだったが、英語やそろばん、水泳など効果が目に見えるものにシフトしていた。

「ご近所の目もあるので、看板ははずしました。当時、娘は22歳だったから、そんな若い子に子供を任せる親御さんがいらっしゃらないと思ったんです。今みたいにSNSがあれば、あっという間に生徒さんが来たんでしょうけれどね。当時は、スーパーマーケットの掲示板コーナーにピアノ教室の張り紙をするくらいしかできませんでしたから。そうそう、あれをやろうとしたら、主人から“みっともないからやめろ”と言われたんです」

母の肩書は「主婦」、娘の肩書は「家事手伝い」。時間が有り余るほどある娘と順子さんは旅行や買い物などに出かける。

「22歳から28歳まではあっという間でした。“いずれお嫁に行くのだから”と、ヨーロッパ1周旅行もしたんですよ。主人は当時、ドイツのデュッセルドルフに1年間の単身赴任をしていたので、娘と交代で、3回くらい行ったかな。あるときは1カ月間以上滞在して、主人の運転でイタリアなどにも行っていました。あのときは主人も楽しそうでした。コロナになってみると、あの時、行ってよかったと、主人と話すんです」

【先延ばしした結婚問題、30代は光の速さで駆け抜け、娘は40代になってしまった~その2~に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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