取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

優しくておとなしいのに、見合いは全敗

神奈川県相模原市に住む順子さん(仮名・72歳)の娘は44歳。心が優しい美人ゆえに、都内の音大を卒業後、最初に勤務した幼稚園でいじめに遭い、以降、家事手伝いをしている。

【その1はこちら

娘のキャリアは、母親の影響を受けることが多い。順子さんは、元軍人の父と典型的な大和撫子の母に、行儀やしつけを厳しく育てられた。

「短大を卒業してから、総合商社に勤務しました。そこで夫と出会い、恋愛結婚して24歳のときに寿退職。26歳で長男を出産し、28歳で娘が生まれたんです。私は和裁も洋裁もできるので、お友達の子供のミュージカルの衣装を作ったり、ときどき、手芸の講師の依頼を受けたりしています」

“いい男”と結婚するまで、娘には「家事手伝い」をさせていればいいと思っていた。26歳から30歳まで、何度か見合いをさせてみるが、すべて向こうから断られてしまう。

「娘はおとなしくて、優しい子なのですが、今の男性にとっては物足りないみたいですね。30歳の時に、“どうしてもこの人と結婚させたい”と思うお医者さんがいて、私も娘を最大限にキレイにして、プロのメイクまでつけて見合いに行かせたのですが、すぐに断られてしまった。30代は年に1~2回お見合いをさせていましたが、あっという間に終わってしまったんです。おそらく、娘はいちども男性と交際したことがない」

娘は毎日、何をしているのだろうか。

「ワンコの散歩をして、家の掃除をして、料理をして……本を読んだり、英語やフランス語の勉強をしたり、音大時代の友達と会ったりしています。音大時代のお友達が、ネットショップを経営していたときは、そのお手伝いをしていたみたいですけれど、お店を閉めてしまってからは何もしていないみたいです。今、お友達は結婚してハワイに住んでいるので、時々連絡を取り合っているようです」

ちなみに順子さんの夫は、定年退職後、ゴルフ三昧。友人が立ち上げたNPOの手伝いなどをして、アグレッシブに活動している。順子さんのことを愛しており、夫婦関係は良好だという。46歳の息子は、外資系コンサル会社に勤務しており、同じくコンサルの女性と結婚。品川区内に住み、2人の娘は高校生と中学生だという。

「息子は“あちら”の家の人になってしまうんですよね。どうも私はお嫁さんに嫌われているらしくて、お正月にちょっと挨拶に来るくらいで、サッと帰られてしまうんです。孫たちが小さい頃は、お嫁さんが海外出張中に、2人の子どもを丸々1週間預かったこともあったのにね。あれも、娘がいたからできたのに。恩知らずですよ」

両親が娘を養っているが、コロナ禍で死を強く自覚した。次ページに続きます】

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