個人事業主やフリーランスの方は、確定申告をすることで、毎年1年間の所得を計算して、所得税と住民税などを納税する必要があります。確定申告の提出時期は決まっているので、それに合わせて準備が必要です。ただ、うっかり提出期限を過ぎてしまった場合はどうしたらいいのでしょうか?
今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき、確定申告の期限を過ぎたときのペナルティや、提出が遅れた場合の対処法についてご紹介いたします。
目次
確定申告の期限とは?
確定申告は期限に遅れたら申告できない?
確定申告の期限に遅れた場合のペナルティとは?
確定申告の期限に遅れたときの対処法はある?
まとめ
確定申告の期限とは?
所得税の確定申告書の提出は、納税が発生する場合、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、原則として翌年2月16日から3月15日までの間に申告書を提出することが必要です。3月15日が土曜日、日曜日または国民の祝日にあたる場合は、翌月曜日が申告書を提出する期限(法定申告期限)になります。
国税を納付すべき期限のことを法定納期限といい、原則法定申告期限と法定納期限は同日の日であることから、原則3月15日までに税金を納付することになります。
確定申告は期限に遅れたら申告できない?
確定申告の期限である3月15日を過ぎてしまったら申告できないのか? というと、そうではありません。5年間はさかのぼって申告することが可能です。ただし、申告期限から遅れて申告した場合は期限後申告として取り扱われるため、ペナルティが課されることになります。
一方、前もって払っている税金が多いため、還付を受けるために行なう還付申告の場合は、3月15日までという縛りもなく、1月1日から申告することが可能です。
また、申告可能になった日から数えて5年以内であれば還付を受けることができます。還付申告の場合には、3月15日までに提出しなくてもペナルティを課されることはありません。
確定申告の期限に遅れた場合のペナルティとは?
確定申告の期限に遅れた場合は、本来納めるべき税金とは別に、以下のペナルティが課されることになります。
(1)無申告加算税
無申告加算税は、申告期限までに申告をしておらず、期限後に申告した場合に課されるペナルティのことです。原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額が無申告加算税として課税されます。無申告加算税の納税額は、本来納付すべき税額の他に15%や20%といった高い税率が課されるため納税額が大きく増えてしまいます。
(2)延滞税
納税額が発生したとき、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じて一定の延滞税を納付する必要があります。つまり、法定納期限である3月15日の翌日の3月16日から納付するまでの日数に応じて延滞税が課されることになるのです。また、延滞税の割合は期限後申告の場合、2か月以内とその後で異なります。
・申告書を提出した日の翌日から2月を経過する日までの期間
年7.3%と(延滞税特例基準割合 + 1%)のいずれか低い割合
・2月を経過する日の翌日以後
年14.6%と(延滞税特例基準割合 + 7.3%)のいずれか低い割合
特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を、12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合と定められています。これに年1パーセントの割合を加算した割合が延滞税特例基準割合です。
令和5年の特例基準割合が0.4%なので、結果的には、下記の割合となります。
・2月を経過する日までの期間:延滞税特例基準割合(0.4% + 1%)+ 1% = 2.4%
・2月を経過する日の翌日以後:延滞税特例基準割合(0.4% + 1%)+ 7.3% = 8.7%
(3)65万円の青色申告特別控除が受けられなくなる
青色申告で確定申告すると様々な節税メリットがありますが、なかでも代表的なのは、最大65万円の青色申告特別控除が受けられる特典があります。しかし、提出期限に遅れてしまうと、この控除額が最大10万円に減額され、その結果、納める税金の額が増えることになります。
(4)青色申告の承認が取り消しになる
2事業年度連続で期限内に確定申告書を提出しなかった場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。
確定申告の期限に遅れたときの対処法はある?
無申告加算税に関しては、遅れた場合でも以下の対処を行うことによって、軽減することが可能です。
1:税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、本来の割合から5%の割合まで軽減されます。
2:次の要件をすべて満たせば期限後申告であっても無申告加算税は課されません。
(1)法定申告期限から1か月以内に自主的に申告している。
(2)納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付している。
(3)期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められた場合
一方、延滞税については、期日が過ぎれば過ぎるほど利子のように税金が上乗せされていきます。そのため期限が過ぎていても早めに納付することで支払負担を軽減することが可能です。
よって、確定申告を忘れてしまった場合は、できるだけ早く納税申告することが一番の対処法となります。
まとめ
確定申告の期限を過ぎてしまうと無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されて、想定していた控除が受けられなくなるため、期限内に納税することが大切です。ただし、確定申告を忘れてしまった場合でも、できるだけ早く納税申告することで、延滞税の支払い負担を軽減でき、また無申告加算税は申告期限から1か月以内に自主申告をし、一定の要件を満たせば払わずに済みます。
逆に期限が過ぎていることに気づいていながら申告を放置し、税務署から悪質なケースと見なされた場合は、さらなるペナルティを課される可能性も生じてきます。期日を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く申告するようにしましょう。
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)