シスターフッド(女性同士の連帯)を描いた映画やマンガがヒットし、女性同士の友情が注目されている。しかし、現実は、うまくは行かない。これは女性の友情の詳細をライター・沢木文が取材し、紹介する連載だ。
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多様化の時代に、注目されている考え方がフェミニズムだ。『大辞泉』を引くと、「女性の社会的、政治的、経済的権利を男性と同等にし、女性の能力や役割の発展を目ざす主張および運動。女権拡張論。女性解放論。」とある。日本では明治末期から活動を開始した思想家・平塚らいてう以降、多くの論客が登場し、研究や実践、啓蒙活動が行われている。
「いいとは思うんですけれど、私達には関係ないんですよね……」と話すのは、地方都市に住む信子さん(63歳)だ。「“目を覚ませ”と言われると、これまでの人生を否定されるようで」と続ける。
もうすぐ40歳の長男・次男は未だ独身
信子さんはずっと地元で生活をしている。地元の県立高校を卒業後、地元の会社に勤務し、3歳年上の夫と職場結婚をして40年になる。仕事を続けながら、兼業農家の夫の実家も手伝い、2人の息子を産み育てた。
「お兄ちゃんは自動車メーカーに勤務しているのよ。高校まで野球をやっていて、成績も優秀。高校3年のときに、会社の人事の方が来て“ウチに来てください”ってスカウトに来た。そのままもう20年近く工場で働いているの。工場長になるんじゃないかって言われているのよ」
下の息子は、高校卒業後、市役所に勤務している。信子さんの息子は、地元のエリートだ。しかし、2人とも30代後半なのに、独身であることが信子さんの悩み。
「二人とももうすぐ40歳なのに、実家暮らしよ。地元に若い女の子がぜーんぜんいないの。お兄ちゃんもチビ(次男)も、お金もあるし、会社もしっかりしている。それに私が言うのもなんだけれどイケメンなのよ。それなのに全然お嫁ちゃんがこない。私がまだ元気なうちに、孫ができればいくらでも面倒を見てあげられるのにね。結婚の話をするとムスッとするから、本人には言えないんですけれどね」
信子さんは、夫が定年退職した後も、実家に住む息子2人の弁当を作り続けているという。妻としての仕事、子育てを全うした女性の自信と、「こんなはずではなかった」という満たされなさに揺れ動いている感じがある。
そんな信子さんは最近、高校時代の仲間と集まるようになった。
「この年になると、昔の友達がよくなるの。お勤めをしていると、職場の仲間との話が楽しくなり、母親になればママ友の付き合いが生まれる。その時期が終われば消えていく関係ね。学生時代の友達って、大人になると会わなくなるもの。でも、昔の友達はいい。“あのころ”に戻るのよ」
【熟年離婚し、東京から出戻って来た“招かれざる客”……次のページに続きます】