「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
2022年12月21日、リクルートワークス研究所は、2024年卒の民間企業での新卒者(大学・院卒)採用見通しの調査データを発表。それによると、新卒採用数が「増える」企業の割合が15.5%で、「減る」は3.6%、その差は+11.9%ポイント。これは2023年卒調査(+7.0%ポイント)よりプラス幅が増加。採用に積極的な企業が多いことがわかった。
結子さん(55歳・会社役員)は、親友・依子さん(専業主婦・55歳)の息子(23歳)を縁故採用する。「その頃に、40年近く続いた友情の破綻が始まっていたのかもしれない」と語る。
高校卒業後、ルームシェアした切実な理由
結子さんと親友・依子さんは、高校時代に中堅都立高校のソフトボール部のチームメイトとして出会った。
「地元の下町エリアの上位高校。進学と就職が半々の中途半端な学校で、当然チームは弱小でした。私も依子も中学時代からソフトをやっていて、“チームを強くしよう”と頑張った。卒業するころには、交流試合ができるようになっていました」
卒業後は、フリーターになる。当時のフリーターは自由な職業と認知され、給料もよかった。
「1日8時間労働で、ガードマンなら1万円、マネキン(店頭で試食販売をする仕事)は1万5000円などザラでした」
結子さんと依子さんは、お互いに家族に問題を抱えていた。結子さんの父は酒乱で飲むと家族に暴力を振るう。そして、依子さんは母からの支配と依存に苦しんでいた。
「高校3年間、毎日一緒だったのに、親の話はしませんでした。卒業後、私は仕事が終わると地元のファストフード店で閉店(深夜2時)まで過ごしていたのですが、そこに依子もよく来ていた。スマホどころかポケベルもない時代です。対面でしょっちゅう会うと、人間関係は密になる」
あるとき、結子さんは顔にあざができた。それを見つけた依子さんが「どうしたの?」としつこく聞いた。結子さんは「ぶつけた」などごまかしていたが、「父に殴られた」と真実を伝える。
「依子は“結子がかわいそうだ”と泣いてくれた。そのときまで、父の暴力は当たり前だと思っていたんです。でも依子が“かわいそうに、かわいそうに”と泣くので、私は“かわいそうな人なんだ”と認識できたんです」
他人の反応で、自分の置かれた立場を知る。相手の依子さんも自分の母の支配について話してくれた。
「娘の生理周期の記録、日記の提出など結構すごい支配をされていて、それも“かわいそう”だと思いました。その日は公園に移動して朝まで話し合い、家を借りて一緒に住むことにしたんです」
場所は憧れの街・吉祥寺に決めた。しかし10代の女子2人に貸してくれる大家はいない。20件以上断られた後、吉祥寺駅から徒歩15分、練馬区内にある古い木造アパートに決まった。
「砂壁で和式トイレ。追い炊きのガス風呂で、2LDKで7万円。6畳と4.5畳に小さなキッチンがある物件で、当時としても破格。保証人は公務員の兄……と言っても父親は別ですが、拝み倒してなってもらいました」
2人はそこに19歳から26歳までの7年間住む。
「当初は依子の母親が押しかけて、警察沙汰になったことも。2人の生活は楽しかったですよ。砂壁に布を張り、そこに映画のチラシをコラージュしたり。フリーマーケットでヴィンテージ食器を集めるなどして、精一杯おしゃれを楽しんでいました」
【同居の解消は、物件の取り壊しと、彼氏を連れ込んだこと……次のページに続きます】