1年間の医療費が多額にかかってしまった方は、医療費控除の手続きをすることで、税金が還付されるのをご存知でしょうか。普段あまり病院に通わない方でも、大きな病気やけが、歯の治療などで多額の治療費を支払った場合には、医療費控除の検討をしていただきたいと思います。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、医療費控除の申請方法や注意点についてご紹介いたします。

目次
医療費控除の申請方法とは?
過去分の医療費がある場合
医療費控除の申請のために事前にやっておくと良いことは?
医療費控除を申請するに当たっての注意点は?
まとめ

医療費控除の申請方法とは?

医療費控除とは、ご本人やその方と生計を一にする配偶者、その他のご家族のために医療費が発生した場合に、一定の金額を医療費控除額として所得金額から差し引くことが可能です。

医療費控除は、確定申告を行う事で申請が可能で、年末調整では適用を受けることができません。確定申告は1月1日から12月31日までの収入に対して、翌年2月16日から3月15日までの期間、最寄りの税務署やインターネット経由によるe-TAXで申請を受け付けています。医療費控除を受けるためには、「医療費控除の明細書」を、確定申告書に添付する必要があります。

医療費控除の明細書は、医療費の総額のほか、下記事項を記載する書類です。

・医療を受けた方の氏名
・病院・薬局などの支払先の名称
・医療費の区分(診療・治療、介護保険サービス、医療品購入など)
・支払った医療費の額
・支払った医療費の額のうち、高額医療費などで補填される金額

また、医療費控除はスマホでも手続きをすることができます。手続きのためには、マイナンバーカードもしくは、e-Taxによる申告用のID・パスワードが必要です。一度、ID・パスワードを取得してしまえば、スマホだけで手続きが完結するのでかなり便利でしょう。

過去分の医療費がある場合

もし、今年分の医療費より以前の医療費を発見した場合、「更正の請求」という手続きを行うことで、期限を過ぎた後でも医療費控除を受けることができます。更正の請求は、法定申告期限から5年以内の間であれば、手続きを行うことが可能です。例えば、令和3年分の確定申告に係る更正の請求については、令和9年3月15日まで手続きが認められます。

更正の請求を行えば、過去分の税金でも還付することが可能です。そのため、昔の領収書などが見つかった場合には、医療費控除の適用が受けられるのかどうか、判定することをおすすめします。

医療費控除の申請のために事前にやっておくと良いことは?

確定申告の受付がスタートするまでに、医療費控除の適用を受けることができるのか判定しておくことと、医療費の集計を事前にしておくと良いでしょう。

医療費控除の適用判定

まずは1年を通じて支払った医療費が医療費控除の適用基準に達しているか、確認が必要です。医療費控除は、1年間における医療費の総額が10万円(※)を超えている場合、その超えている部分が対象になります。

(※)総所得金額等が200万円未満である場合には、総所得金額等の5%相当額

よって、総所得金額等が200万円を超えている場合、医療費の総額が10万円を超えていなければ、そもそも医療費控除の適用がありません。

また、医療費に対して入院給付金など保険金が補填される場合は、医療費から保険金を差し引いた金額が医療費控除の対象になります。仮に支払った医療費が10万円を超えていても、それらの給付金の影響で、実質的には支払金額が10万円以下であれば、適用を受けることができません。

医療費の事前集計

次に、医療費の領収書が多い場合は、事前に医療費の集計をしておくと良いでしょう。集計には、国税局の確定申告特集で提供されている医療費集計フォームで入力すると便利です。

国税庁が提供している医療費集計フォームは、支払った医療費の内容をエクセルで入力・集計するためのフォーマットです。確定申告書等作成コーナーの医療費控除の入力画面で読み込み、反映することができます。医療費の領収書の枚数が多い方は、医療費集計フォームを利用した入力が便利です。

医療費控除を申請するに当たっての注意点は?

支払った医療費が医療費控除の対象になるのかどうか、判断をしなければなりません。医療費控除の対象となるものと、ならないものの具体例をご紹介します。

医療費控除の対象となる医療費

原則として、診療・治療に係る医薬品の購入費用や、あん摩マッサージ指圧師による施術費用、治療に必要な医薬品の購入費用などが医療費控除の対象です。

その他、代表的な内容として、下記のものは医療費控除の対象となります。

・病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、指定介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設または助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
・介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
・医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用
・不正咬合の歯列矯正、インプラントの治療費

医療費控除の対象とならない医療費

一方、以下の費用については医療費控除の対象とはなりません。

・人間ドックや健康診断に係る費用
・インフルエンザ等の予防接種代
・医師の指示に基づかない差額ベッド代
・容姿を美化する目的の美容整形費用、歯科矯正費用
・健康増進のための漢方薬やビタミン剤に係る購入費用

まとめ

医療費控除を受けることで、税金が還付されることはご存じの方も多いと思いますが、同時に確定申告が手間であると思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。原則的に医療費の総額が年間10万円を超えている場合には、必ず所得税と住民税が減額されますので、是非活用をしていただきたいと思います。

ひと昔前は、医療費の領収書を税務署に郵送する必要がありました。しかし現在は領収書の保管をしておけば、スマホだけでも手続きが完結できます。医療費を多額に払った時は、医療費控除により税金の還付手続きをお勧めいたします。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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