関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
未成年者が、家族の世話や介護に追われ、勉強や部活、友達との交流ができなくなる「ヤングケアラー」問題。ここ数年、社会問題として顕在化した。
その対策として2022年12月、日本財団はヤングケアラーを支援するために愛媛県新居浜市などの自治体と提携。ヤングケアラーを早期に発見して支援するモデルを構築し、これを全国に普及させることを狙う。
今回の依頼者・早智子さん(30歳・無職)は、「私は元ヤングケアラーです。父親(57歳・会社経営)の不倫で母(享年・53歳)が病み、半年前に母が亡くなるまでそのケアに追われて生きてきました」と語る。母の死去後、父と決別するために、私達に調査を依頼。
【それまでの経緯は前編で】
父が出入りしていた建売住宅
遊び好きの父の行動がわからないというので、父の会社の近くで張り込みをスタート。かつて20人以上の社員がいたという父の会社は東京23区郊外にあります。
祖父が建てたという自社ビルは4階建ての鉄筋造り。かつての隆盛が伺えますが、今は明らかにさびれています。エントランスには枯れた観葉植物があり、わけのわからない書類や工具が堆積していました。
朝、9時に60代と思しき女性が会社の鍵を開けて中に入っていきます。そして、9時半に父が入っていきました。
父はデニムに高級ダウンジャケットを羽織っています。髪はブリーチしており、全体的に若々しい。
父は会社で2時間程度を過ごし、外に出てきました。そして近くのファミレスに行き、スーツを着た男性と30分ほど深刻そうに話をしていました。それからトレーニングジムに向かい、1時間程度で出て来て、再び会社へ。
夕方に出て来て、徒歩で帰宅したのは会社の近くにある、一戸建てです。ここは、1階が車庫になっているよくある建売の構造で、まだ新しい。表札を見ると父の苗字が記されており、自転車2台と縄とびなどが玄関前にあります。
近所の人に聞き込みをすると、50代の女性が「〇〇さん(祖父の屋号)の土地に息子さん(父)夫妻が引っ越してきたのよ。この一角は〇〇さんが持っていたけれど、2年前に売っちゃって。息子さんが引っ越してきたのは半年前くらいかしら」と言っていました。
妻は40代、その息子は小学校3年生で、ここで3人暮らしをしていることもわかりました。この家は、依頼者・早智子さんの自宅から、10キロ程度です。
翌日、朝から張り込みをしていると、ロングヘアで背が高い40代の女性と、ランドセルを背負った男の子が家から出てきました。男の子は学校へ、女性は近くの全国チェーンのお弁当屋さんの通用口から中に入っていきます。
ペアの探偵が父を尾行すると、昨日と同じく徒歩で会社に向かっていたことが判明。
【異母弟の登場に早智子さんは……次のページに続きます】