テレホンカードの枚数と穴を見る母

以上を早智子さんに報告し、追加で女性の身元を調べたところ、女性は15年ほど前、キャバクラ勤めをしていた頃に、当時40代前半の父と出会い交際に発展。

父はその女性にキャバクラ勤務をやめさせて、運送会社に転職させました。女性は体育大学を中退した元球技選手で、身体能力が高い。

当時その女性は親の住宅ローンを返済する手伝いをしており、よりお金を稼ぐために、普通の配達ではなく大きな荷物専門のきつい仕事を選んでいたそうです。

それから3年目に息子を妊娠。そのときに運送会社を退職し、今のお弁当店に転職。パートから正社員になり、ずっと働いていることがわかったのです。

以上を早智子さんに報告すると、「なんですか、これは……私と母のほうが、愛人宅みたいじゃないですか」と驚いていました。

感情が高ぶる早智子さんには、なるべく冷静に伝えました。そして、この調査の目的を書き出しつつ、「感情的にならないように、財産を守るためには、お父さんとは、弁護士同伴で話したほうがいいですよ」とお伝えしました。

その後、早智子さんは「私が見ていた世界と、周囲からの考えは真逆でした」と私に連絡をくださったのです。

「若い頃の母は、父を好きなあまり、押しかけるように結婚し、私が生まれました。父は母を愛そうとしましたが、母から常に浮気を疑われ、“それならば”と実際に別の女性と交際するようになったそうです」

結婚は約30年前。今のように携帯電話が一般的でなかった時代です。母は父のテレホンカードの穴の数を見ては「浮気をしているでしょう!」と泣きわめいたことも聞かされます。

「私は母から“父はひどい人だ”と聞かされて育ったので、父に対する不信感はありました。父と話すと、父はそれなりに考えており、祖父の代から続く会社はもう時代に合わないので終わらせるように準備をしていること。父はこの女性と出会うまでは、何人かの愛人をかこい、生活費から遊興費まで支払う生活を続けていました。しかし、この女性は今までの女性と異なることから、より深く愛するようになったことまで話してくれました」

早智子さんに対しても深く詫び、「自分の人生を生きてほしい」と言ったそうです。早智子さんは父に相応の慰謝料を請求。父はそれに応じたそうです。

「親子の縁を切られるってことです。私はきょうだいもいないし、母も死んでたったひとりです。両親を恨んでも前に進まないことはわかっているのに、どうにもならないんです」と泣いていました。ただ、気持ちを前に向け、自分の幸せのために進むようにしているとのこと。

このケースのように、親の行動を調べていたら、想像もつかない素顔が見えることが多々あります。それをどう受け止めるかは、その人次第。後悔なく生きるためには、残酷な真実と向き合うことも必要なのではないかと感じてしまいました。

探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/

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