関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
2022年に厚生労働省が発表した、『人口動態統計月報年計(概数)の概況』(2021年)によると、日本人の死因の第1位は「がん」(死亡率26.5%)だった。男女問わず、肺がんと大腸がんにより命を落とすことが多い。1981年から40年間、死因の首位はがんである。
第2位は心臓の病気全般を指す「心疾患」(14.9%)、第3位は「老衰」(10.6%)だ。
今回の依頼者・史織さん(30歳・公務員)は、父ががんで亡くなった5年間、母(56歳)の行動に頭を悩ませてきたという。
お嬢様育ちで、「脳内で自分は姫」の母
依頼者・史織さんは「母が本当におかしいんです。どこから話していけばいいやら……」と思い詰めた表情で私たちに連絡をしてきました。
史織さんは、身長が170cmほどあり、筋肉質でがっしりした体をしている。ベリーショートで全体的に気品があり、職場結婚した公務員の夫(38歳)とトレイルランをするのが趣味だという。そんな世間話をしながら、母の行動が変わったきっかけについて伺いました。
「父が60歳の若さで亡くなってから、ホントにおかしくなってしまったんです。父は会社を経営しており、創業から30年間、ずっと手堅く黒字経営を続けてきました。しかし、数年前に肺がんが発覚。手術しても再発や転移を繰り返し、1年前に亡くなりました」
母はおろおろするばかりだったといいます。
「父は終末期医療(ターミナルケア)病棟で最期を過ごしたのですが、弱っていく父を正視できない母はろくに病院にも行かない。私と父の妹で看取ったのです。若い頃の父は武闘派だったようですが、亡くなる前は穏やかになり、私に“お前に会社を託したい”と何度も言っていました」
父が亡くなってから、史織さんと弁護士で財産を整理。会社もいい売却先を見つけ、社員の行き先も決めたそうです。
「相続税も支払い、母には遺産と自宅、父が所有していた不動産資産、そして保険金が入ってきたのです。私にも弟にもそれなりの遺産が入り、“家族は解散”することにしました。というのも、母は自分勝手。甘やかされて育っているから、頭の中はお花畑というか、ワガママなお姫様みたいな人なんです」
しっかり者の父が家族を束ねていました。史織さんはそんな父の近くにいたから、堅実に人生を歩み、公務員として社会全体のために働いています。
「父は私には厳しく社会の道理を教えてくれたのですが、母と5歳下の弟にはべらぼうに甘かった。2人は“困ったことがあると父がなんとかしてくれる”とやりたい放題なんです。弟は仕事もせず、サーフィンやアウトドアをしているのですが、母はそれよりもひどい」
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