関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
2022年に内閣府が発表した『男女共同参画白書』をみると、働く女性が増え続けていることがわかる。「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」は1985(昭和60)年は936万世帯だったが、2021年には458万世帯に半減。
一方で、「男性雇用者の共働き世帯」は増えた。1985(昭和60)年は718万世帯だった。これが、2021年には1117万世帯に増加している。
長年、専業主婦を続けていたが、世情や経済不安から復職するケースは増えている。
信明さん(60歳・メーカー勤務)は、結婚10年になる妻(45歳・会社員)から「住宅ローンの返済がきつく、復職してもらって半年、離婚を切り出された」と頭を抱えていた。
5歳のときに父親を亡くし、年上の男性が好き
今回の依頼者・信明さんは5年前、55歳のときに役職定年になり、年収1000万円から500万円台に半減してしまったそうです。
「当時は貯金も3000万円以上あり、余裕だと思っていたのですが、現実は想像以上に厳しかった。そこで5年前に妻に働いてもらうことにしました」
信明さん夫婦は、妻は15歳年下という年の差カップルです。
「50歳までずっと仕事と趣味(トライアスロン)一筋に生きて来て、特に不都合を感じなかったんです。でも、17年前にウチの会社の派遣社員として、妻が来た。妻は私に対して最初から“好き”“愛してる”と告白してくれて、女性に免疫がない私はコロッとまいってしまった」
妻は離婚歴があり、信明さんの会社に入ったのは、離婚直後だったと言います。当時、35歳で明るい性格、やや太めの体型で上品な印象の服やメイクをしており、40代以上の男性社員は「あの子、いいよね」と噂話をしていたとか。
「いわゆる“おじさん受け”をするタイプです。妻は5歳のときに父親を事故で亡くしており、年上の男性が好きだと言っていました。前の夫も20歳年上だったそうです。妻はかなり積極的で、最初にデートした日に家に押しかけられて、男女の関係になってしまいました」
その後、妻はお弁当を作ったり、お風呂のときは背中を流してくれたり、トイレ掃除もしてくれるなど、信明さんの世話をかいがいしくしました。
「こんな女性とこれからの人生を歩んだら素敵だろうと思ってしまったんです。いろんな相性も良かったと思います。それでも、どこか信じられない部分があり、結婚には二の足を踏んでいたのですが、交際2年目に娘を授かったんです。それを機に入籍しました」
入籍してから、妻は少しずつ変わっていったそう。まず、家事をしなくなったのです。
「妊娠していて体がだるいとのことでした。それで私が家政婦さんを雇ったりしてやり過ごしていたのです。当時は年収がかなり高かったので、それもできたんですよね」
【夫婦も「金の切れ目が縁の切れ目」なのか……次のページに続きます】