関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、春子さん(65歳)です。調査対象は嫁(35歳)と孫娘(7歳)。近所に住む2人を見かけなくなったことで、私たちに相談をしてくださいました。
最近、「子供に嫌われたくない」とか「刺激したくない」などと考える親が増えており、直接本人には聞けないことを、私たちに依頼されるケースが目立ってきています。
スマートロックで行方不明がわかった
春子さんは23区内に住んでいる「いかにも、奥様」という雰囲気の女性です。髪は美しくセットがされており、上品なツーピースを着ています。
「嫁が孫娘を連れて、どこかに行ってしまったのです。息子一家が住んでいる家は、かつて私たちが住んでいた家で、息子たちが結婚したときに、彼らに譲ったんです。私と主人は近くのマンションに引っ越して、コロナ前まではお互いの家を行き来したり、孫を預かったりしていたんです」
しかし、気が付くと、そのやりとりは途絶えていた。
「主人が高血圧なので、コロナ対策をしっかりしていたんです。ですから、嫁ちゃんが仕事で忙しいときも、孫を預かるのはお断りしたこともありました。あのとき、コロナは本当に怖かったですから」
そんな最中に、息子(35歳)の浮気が発覚した。
「息子は主人の会社の専務をしているんですけれど、コロナの不安で魔が差したんでしょうね。ウチに古くからいる社員とダブル不倫をしていたんです。相手の夫が怒鳴り込んできてね。ホントに大変だったんです。相手の家庭がめちゃくちゃになってしまい、報復するとかしないとか、大騒ぎだったんです」
セキュリティのことも考え、そのときに、家にスマートロックをつけたという。スマートロックとは、鍵そのものがインターネットにつながっており、スマホをかざすだけで施開錠ができ、入出記録が残る鍵のこと。
「セキュリティについても考えなくてはいけないし、コロナで非接触がいいって言われていたので、ウチも息子の家もスマートロックにしたんです」
入出記録は互いに共有はしているけれど、特に見ることもないというような日々が続いていたそう。
「嫁と孫の姿を見かけないと思って記録を見たら、すでに6か月以上も家に住んでいないことがわかったんです。息子に聞いても“家にいるよ”と言うだけ。ここで“スマートロックの記録を見ると2人はいないのよ!”と言ったら、絶対に嫌われるし、履歴を見る権利を奪われると思ったんです。だから、あなたに調べてほしいの」
【最初から夫婦の折り合いが悪かった……次のページに続きます】