「従業員第一主義」の父は母にある我慢をさせていた

父の死後、母は周囲がうんざりするほど泣き暮らしていたそうです。

「ろくに見舞いもしなかったくせに、葬式では大声で泣きじゃくり、火葬のときには棺に取りすがって、床に倒れ込んで泣いていました。事情を知らない人は、“あんなに思われて、理想の夫婦だ”と言っている。そういう人は、泣かない私に“冷たい娘だ”と言い捨てるんです。遠い親戚は“ママが後追いしないように見張っていないと”などと言うけど、とんでもない。母は父という“自分を守ってくれる施設”が、結婚30年目にして突然消えて驚いているだけ」

地方出身でたたき上げの父と母は見合い結婚したといいます。母に一目ボレした父は、終生母を大切にしました。

「それでも、父は母に“俺は社員第一主義を貫かなければならない。だから、社員の見えるところで過度な贅沢をするな”と言い続けてきました。母はハイブランドやハイジュエリーが大好きなのに、思うように買えない。お金はあるのに買えないというフラストレーションを溜めていたんでしょう。父が亡くなって3か月もしないうちに涙は乾き、仏壇は埃をかぶり、母は買い物依存のような状態になっていました」

30代の若く美しいときに着たかった服を、50代で購入。すると自分の老いが気になるようになり、美容整形などに手を出すように。

「遺産はあるとはいえ、母はこれからまだ生きる。今の調子だとおかしなことになってしまう。それに、最近は謎の外出や宿泊が多いんです。母の性格は欲望に弱い。自分が弱っちいくせに、人に頼られることが好き。才能ある若者の生活の面倒を見るなど、人が良く人たらしな性格。もし、悪い人に頼られていたら、本当にまずい。あの母をだまして財産を奪うのは簡単だと思うんです」

史織さんが恐れているのは母の再婚でした。

「母は男性にちやほやされるのが大好きなんです。もし、悪い男がいるなら、その相手も調べていただきたいのです。同じ東京都区内に住んでいるとはいえ、私には家庭も仕事もあります。いざと言うときに、母を守れるような証拠をおさえていただきたい。ひとまず1週間、べた付きで調査をしてください。どうぞよろしくお願いします」

【母には本命の男性のほかに、もうひとりいた……その2に続きます】

探偵・山村佳子
夫婦カウンセラー、探偵。JADP認定メンタル心理アドバイザー、JADP認定夫婦カウンセラー。神奈川県出身。フェリス女学院大学卒業。大学在学中に、憧れの気持ちから探偵社でアルバイトを始め、調査のイロハを学ぶ。大学卒業後、10年間化粧品メーカーに勤務し、法人営業を担当。地元横浜での調査会社設立に向け、5年間の探偵修業ののち、2013年、リッツ横浜探偵社設立。依頼者様の心に寄り添うカウンセリングと、浮気調査での一歩踏み込んだ証拠撮影で、夫婦問題・恋愛トラブルの解決実績3,000件を突破。リッツ横浜探偵社 http://www.ritztantei.com/

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