多額の医療費を支払った際、確定申告において医療費控除を受けることで税金を低く抑えることができます。しかし確定申告といわれると普段馴染みのない方には、「難しい」、「煩雑である」などのイメージがあるかもしれません。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、パソコンやスマートフォンを使用して、e-Taxでの医療費控除の申請についてご紹介したいと思います。

目次
医療費控除とは?
医療費控除を受けるために必要なものは?
e-Taxで医療費控除を申請する手順・やり方は?
まとめ

医療費控除とは?

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に、自分自身や生計を一にする配偶者や、その他の親族のために支払った医療費が10万円(※)を超える場合、一定の金額を所得から控除する制度のことです。

(※)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額の5パーセントの金額

ただし、生命保険契約などの入院費給付金や、健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などは、その給付の対象となった医療費から差し引かれます。

控除の対象になる医療費とは?

では、医療費控除の対象となる医療費とはどのようなものになるのか、国税庁のホームページで掲載されている「タックスアンサー№1122【医療費控除の対象となる医療費】」に、詳細が記載されています。ここではその一部を抜粋してご紹介いたします。

1.医師または歯科医師による診療または治療の対価
2.治療または療養に必要な医薬品の購入の対価
3.あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価
4.保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価
5.助産師による分娩の介助の費用
6.介護福祉士等による一定の痰吸引、経管栄養の対価
7.介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
8.次のような費用で、医師等による診療、治療、施術または分べんの介助を受けるために直接必要なもの

(1)医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの。

(2)医師等による診療や、治療を受けるために直接必要な義手、義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用。

医療費の対象となるのは、医療保険の対象か否かではなく、医師等が治療のために必要として行ったかどうかです。よって歯列矯正費用なども、一般的に歯列矯正が必要な場合は医療費控除の対象になりますが、審美や美容整形のために行う場合は対象にはなりません。

医療費控除を受けるために必要なものは?

医療費控除を受けるためには、医療費控除の明細書もしくは医療費通知書が必要です。それぞれの内容をご紹介いたします。

医療費控除の明細書

医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成し、確定申告書に添付する必要がありますが、領収書そのものを提出する必要はありません。ただし、税務署に領収書の提示を求められた場合は、提示しなければなりません。そのため医療費の領収書は、確定申告から5年間の保存が必要です。

医療費通知書

医療保険者から交付を受けた医療費通知書がある場合は、医療費通知書を添付することで医療費控除の明細書の記載を簡略化することができます。医療費通知書とは、医療保険者が発行する医療費の額等を通知する書類です。次のすべての事項の記載があるものでなければ、添付資料として使用することはできないため、十分にご確認ください。

1.被保険者等の氏名
2.療養を受けた年月 
3.療養を受けた者 
4.療養を受けた病院、診療所、薬局等の名称 
5.被保険者等が支払った医療費の額 
6.保険者等の名称

ただし、この医療費通知書は医療保険者によって集計期間が異なっており、確定申告の対象となる1月~12月とは限らないようです。医療費通知書は添付書類になりますが、念のため医療費の領収書をお手元に残しておき、医療費控除の明細書を作成できるよう準備しておくとよいでしょう。

e-Taxで医療費控除を申請する手順・やり方は?

令和3年分の確定申告から、パソコンで申告書を作成される方も、マイナポータルアプリなどのスマートフォンのアプリでの作成が可能になりました。パソコン上に表示された2次元バーコード(QRコード)を読み取れば、ICカードリーダーを使用せずに、マイナンバーカード方式によるe-Tax送信が可能です。

その際、スマートフォンで医療費の明細を記入する項目があります。領収書やレシートの集計には国税庁ホームページでダウンロードできる「医療費控除の明細書」を利用すると便利です。しかし使用しない場合でも、領収書を下記のように集めておくと、スマートフォンで入力が行えます。

・医療を受けた人ごとに分ける
・さらにそれを病院、クリニック、薬局など支払先ごとに分ける

領収書の整理が終われば、国税庁の確定申告書等作成コーナーを表示し、作成を開始します。その手順をみていきましょう。

e-Taxにログインする

e-Taxログイン画面が表示されるので、マイナンバーカード方式の利用開始手続きを行い、利用者情報の入力後、利用者識別番号を取得します。この過程で、マイナンバーカードをスマートフォンで読み取る作業が発生します。

所得の入力

次に所得を入力します。サラリーマンの場合は、申告する収入である「給与」にチェックを入れる画面があり、ここで勤務先の年末調整の有無等を入力します。

医療費控除の入力

その後「控除の入力」画面に表示されている「医療費控除」のボタンを押すと、医療費控除の入力画面が表示されます。「医療費控除を適用する」にチェックを入れ、準備段階で集計しておいた医療費の金額を入力します。

本人情報や口座を入力

最後に本人情報や還付金を受取るための口座を入力し、申告書データを送信すれば完了です。

まとめ

今回は、e-Taxで医療費控除を行う方法をご紹介いたしました。医療費控除を確定申告で行うことで税金が減少します。そのほか、後期高齢者医療の自己負担割合の減少や、保育所の保険料の減額等の公的な制度において、税金の金額に応じて費用の減額や補助金等の支給等がある場合があります。医療費控除を受けることができる場合は、ぜひご利用ください。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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