義家族に塞がれて息苦しいだけの結婚生活
奈良行きへの覚悟を決めた後に気になったのは住まい。夫からは頑なに「義実家に部屋が余っているから、あくまでも仮で実家に戻ってから家を探そう」という言葉を鵜呑みにしてしまったと篤子さんは後悔を口にする。
「私からの提案で1年も猶予ができたのに、奈良に戻ってから家探しっておかしいですよね。でも、当時は土地勘もまったくないし、新たな勤め先なども考慮してから決めるのもいいかなって安易にOKしてしまったのです……。
結局、4か月も義実家で暮らすことになってしまいました。ある理由で」
その理由とは義姉の里帰り出産。仕事を探す暇さえないほど召し使いのようにこき使われたという。
「私たちの部屋は用意してくれてはいたのですが、義実家には何も聞いていなかった義姉が居座っていました。義姉は里帰り出産で帰省しており、身重だからと、顔を見るなり何でも私に用事を頼んできました。義両親も義姉に甘々で何も言わないし、夫も申し訳なさそうに『今だけだから』と注意をしない始末。
そして、もっと最悪だったのが、義父が持っている投資用のマンションの2部屋のリフォームが完了するから、私たち夫婦と義姉夫婦に暮らせと言ったこと。ありがたい話ではありますが、当然のように、お願いする姿勢も見せずに『晩ご飯はパスタね』と言ってくる人とお隣さんだなんて冗談じゃありません。
私はアイコンタクトで必死に夫に訴えたのですが、夫はその場で笑顔で『ありがとう』と言ってしまった。隣には義姉、徒歩3分の距離に義実家と、見えない塀で閉じ込められている気分です」
篤子さんは義姉の子育てを手伝わされたり、毎週続く義両親との懇親会をかわすべく、すぐに仕事を見つけ働き出すように。しかし、コロナ禍でリモートワークに一時なってしまい、夫にも内緒で自治体が運営するシェアオフィスのフリーパスを契約するなどで乗り切ったという。
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義家族との関係は悪くないものの、近くで干渉されることで不仲になってしまうことも多い。成人してからは友人でさえ作るのが難しいのに、家族とさらに密な関係を求められても受け入れられない人がいるのも当然。元の家族と新しい家族を分けて考えられなければ、新しい家族の未来は暗いものになってしまうだろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。