ふるさと納税で寄附金控除による税金の還付を受けたい場合は、原則として確定申告が必要となります。ただし、年末調整を受けているため確定申告が不要の方で一定の要件を満たす場合は、ワンストップ特例制度を利用することで同様の還付を受けることが可能です。
ワンストップ特例制度の導入により、会社員などの給与所得者は、確定申告を行うことなくふるさと納税による控除を受けることができるようになりました。
そこで今回は日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、ふるさと納税やワンストップ特例制度を申請するための必要書類についてご紹介いたします。
目次
ワンストップ特例制度とはどんな制度?
ワンストップ特例制度に必要な書類とは?
ワンストップ特例制度の手順とは?
まとめ
ワンストップ特例制度とはどんな制度?
ワンストップ特例制度は、平成27年4月1日から適用された制度です。確定申告が不要な給与所得者等について、以下の要件をクリアする場合、ふるさと納税で寄附する際に確定申告を行わずに住民税から税金の控除を受けることができます。
・ふるさと納税以外に確定申告や住民税の申告をする必要がないこと
・年間(1月~12月)でのふるさと納税の寄附先が5自治体以内であること
・寄附の際に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を自治体に送付していること
ふるさと納税以外に確定申告や住民税の申告をする必要がないこと
確定申告をする方は、ワンストップ特例申請を利用することができません。例えば、下記の場合には確定申告が必要になる可能性があるため、ワンストップ特例制度による住民税の控除ではなく、確定申告による寄附金の控除を受けることになります。
(1)個人事業主の場合
(2)不動産収入がある場合
(3)年収2,000万円を超える場合
(4)給料を複数箇所からもらっている
(5)医療費控除の適用を受ける
(6)住宅ローン控除の初年度適用を受ける場合
ワンストップ特例制度の申請を行った後も、確定申告を行うことができます。しかし、対象期間に行ったワンストップ特例制度への申請はすべて無効になるため、ワンストップ特例制度の申請を行った寄附分も含めて、確定申告が必要です。
年間(1月~12月)でのふるさと納税の寄附先が5自治体以内であること
ワンストップ特例制度の寄附先の自治体は5つ以内であることが要件です。なお、同じ自治体であれば何度ふるさと納税を行っても1つとして数えられます。例えば、10回ふるさと納税を行っても、寄附先が5自治体以内であればワンストップ特例制度を活用することが可能です。
寄附の際に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を自治体に送付していること
ワンストップ特例制度を利用するには、寄附先の自治体に申請書等の必要書類を申請期間内に提出する必要があります。注意点としては、同じ自治体に複数回寄附した場合にも、必ずふるさと納税の寄附の回数に応じた申請が必要となることです。例えば、5つの自治体に合計10回寄附を行った場合、寄附先は5つですが、申請書は10回提出しなければなりません。
なお、ワンストップ特例制度を適用する場合、控除対象となるのは住民税のみです。確定申告を行った場合のような所得税の還付はありません。還付という形ではなく、翌年の6月以降に支払う住民税から自動的に控除されます。また、ワンストップ特例を申請した後に転居した場合、寄附先の自治体すべてに「寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書」を、寄附した年の翌年1月10日までに送付する必要があります。
ワンストップ特例制度に必要な書類とは?
ワンストップ特例制度を申請するにあたって、主な必要資料は以下の通りです。
・寄附金税額控除に係る申告特例申請書
・本人確認書類
寄附金税額控除に係る申告特例申請書
「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」は通常、ふるさと納税をした後、自治体からお礼状とともに郵送されることが多いですが、自治体によってはホームページでも入手することができます。
本人確認書類
「マイナンバーカードの写し(両面)」を提出することになります。なお、「マイナンバーカードの写し」ではなく、「マイナンバーカード通知カード」または「住民票(個人番号記載)」を代わりに提出することも可能です。しかしその場合、「運転免許証の写し」、「パスポートの写し」等の身分証の写しをあわせて提出する必要があります。
マイナンバー通知カードを提出する場合、通知カード記載の氏名、住所等が住民票の記載事項と一致していることが必要です。
ワンストップ特例制度の手順とは?
ワンストップ特例制度は以下の(1)から(4)の手順で進んでいきます。
(1)寄附する自治体を5自治体まで選んで寄附する
(2)提出期限までに「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」と「本人確認書類」を寄附した自治体宛に郵送する
提出期限は寄附を行った年の翌年1月10日迄(必着)までに、各自治体に到着するよう送付しなければなりません。なお、この期限に間に合わない場合は確定申告で申し込むことになります。
(3)「特例申請受付書」が自治体から送られる
通常、「特例申請受付書」が寄附先の自治体から送られてくるため、この受付書をもって申請が受付されたことがわかります。ただし、全ての自治体が受付書を郵送するとは限らないようなので、場合によっては寄附先の自治体に直接電話で確認することが必要でしょう。
(4)住民税決定通知書を受け取る。
ふるさと納税を行った年の翌年5月、6月頃に郵送または勤務先から受け取ることになります。ワンストップ特例制度を利用した場合は、摘要欄に寄附金税額控除の記載があるので、控除されている金額が「寄附金額 - 2,000円」となっていることを確認しましょう(ふるさと納税以外の寄附金の控除を受けていない場合)。
まとめ
ワンストップ特例制度は確定申告を行う手間が省くことができ、比較的簡単な手続きを行うだけで寄附金控除が受けられる制度です。ただし、上述したように要件に当てはまらない場合や、提出期限を過ぎてしまうと適用を受けることができなくなるので注意しましょう。
また、ふるさと納税先の自治体によっては、申込手続や申請書が異なることがあります。ふるさと納税で寄附をすると、寄附先の自治体からお礼の手紙や寄附金控除証明書等が送られてきます。ワンストップ特例を希望する場合の手続きや確定申告をする場合の手続き方法等をよくご確認いただくか、ふるさと納税先の自治体にお問い合わせしていただくのがよいでしょう。
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)