干渉材料を作らないため、10年間も事実婚を貫いた

付き合って3年間に相手のご両親とは何度も食事をする仲に。しかし江里菜さんは一度も母親を紹介したことがなく、それを相手に聞かれたときもはぐらかすことしかできなかった。

そんな中、母親が勝手に江里菜さんの家の合鍵を手に入れていたことがわかる。

「彼には母親の体調があまり良くないと嘘をついていました。本当に最低ですけど、心の病があると、言いにくそうに伝えたんです。そう言うと相手が触れてこないと思ったので。

その嘘から彼はまったく何も触れてこなくなったんですが、ある日、母親が私の家の合鍵を使って勝手に遊びに来ていて、家に入るとゆっくりしていた母親と、帰ってきた私たちが鉢合わせたんですよ……。徐々に理由をつけて会わないようにしていて、その頃はもう1年以上会っていなかったんで、母親のほうから痺れを切らして強行に出たようです。

彼に嘘をついたことがバレるし、合鍵も何でいつから持っていたのかわからず一気にパニックになりました」

勝手に大家に挨拶していたことを聞き、江里菜さんは声を挙げて母親を追い返してしまう。そこで母親との関係を彼に正直に話し、不健全な関係を断ち切りたいと打ち明ける。

「彼は最後までちゃんと聞いてくれて、私の目を見て『とことん離れてしまうしかないよ』と言いました。そこから、すぐに引っ越しをして一緒に暮らし始めました。

そして、母親が私の家に勝手にまた来る前に、電話で引っ越しした旨を伝えて、『お互い、犠牲にならないために離れます』とだけ伝えました。母は勝手に行動したことを怒っていましたけど、私は聞かずに電話を切り、そこから一度も話していません。

親だったら私の許可なく戸籍などを調べれば現住所がバレてしまうので、定期的に引っ越しをして、住民票を追っかける感じでズラして移動させていました。直接追いかけてこられても鉢合わせないように。そして、2年前にやっと籍を入れました。理由は、母親が亡くなったからです。ずっと入籍しなかった理由も戸籍からバレたくなかったから。もう干渉されないように、動いた形跡を残したくなかったのです」

* * *

毒親という存在が認知されるようになり、親でも住所の記載がある戸籍の附票に閲覧制限をかけることはできる。しかし、それには大きなハードルがあり、感情面よりも何かをされているという客観的な証拠が重視されるなど、簡単にはできないようだ。親との縁切りは精神的な部分を指す言葉であり、法的に親子関係を解消することはできない(分籍、養子縁組も親子関係の解消ではない)。江里菜さんのように親との死別でやっと進める人も多いのが実情だろう。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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