働く母は迫害されていたと思う

真美さんと玲子さんの友情が30年近く続いたのは、働く母へ迫害を加える社会全体と戦ったからだ。

「軽めの仕事しか与えられなかったり、保育園のお迎えのために17時で会社を出ると嫌な顔をされたりするのは日常茶飯事。当時は少子高齢化が今ほど言われていなかったから、子供の扱いも軽かったんですよね。私の主人は当時超大手企業に勤務してたから、“ご主人の給料だけで生活していけるでしょ? あなたのわがままで働いていると、お子さんが犠牲になるのよ”となんの悪意もなく言われたときはショックでしたよ」

それでも働き続けたのは、玲子さんがいたから。お互いにグチを言って「意地でも定年まで働いてやろうね」と耐えた。

「その連帯感……いわゆるシスターフッドってやつですよ。そういえば、レンタルビデオで『テルマ&ルイーズ』とか『フライド・グリーン・トマト』などを借りてウチに集まって2人で観たこともありました。別室で遊んでいた子供たちが、リビングに来て“ママ、なんで泣いてるの?”と言うこともあったな。懐かしいですね」

頑として勤務を続ければ、それに続く人も出てくる。数が増えれば見方も変わる。

「それでも働く母は少数派。マイノリティですから冷遇されます。でも、子供が成長するとそれどころではなくなる。塾、塾弁、中学受験、お弁当作り、高校進学、大学受験などと怒涛でした。私は息子2人、玲子は娘1人でお互いに競り合わないことも友情が続いた理由のひとつ。玲子は“美人あるある”で、マウンティング体質なところがあり、自分が一番でないと気が済まない人なんです」

真美さんは地味で堅実。価値観が異なることは友情の維持に欠かせない要素なのかもしれない。

【母の駆け落ちと心の傷、不倫を隠さない55歳の女友達に出した結論……。その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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