JRの普通列車・快速列車が1日乗り放題になる「青春18きっぷ」をご存知でしょうか? 上手に使いこなせば、鉄道の旅をたっぷりと楽しむことができます。そこで、『おとなの青春18きっぷの旅 至高の列車紀行』(宝島社)から、青春18きっぷを使ってめぐる東北の旅をご紹介します。
秋田県と青森県をまたいで走り、荒々しい日本海や岩木山などの絶景を望む五能線。観光列車の「リゾートしらかみ」は、指定席券を購入すれば青春18きっぷで乗車できるので、ぜひ乗ってみてください。
写真/佐々倉実
日本海と白神山地の絶景が満喫できる
五能線は、青森県の五所川原と秋田県の能代を結ぶ路線だが、実際の起点は東能代、終点が川部である。世界自然遺産・白神山地や秀峰・岩木山の麓を海岸線沿いにぐるりと迂回するルートで、なかでも東八森から鯵ヶ沢(あじがさわ)までの80キロ余りの区間は、そのほとんどが海岸線に接している。とにかく海が見たいという人にとっては、これ以上ない格好のロケーションだ。
民営化された頃の五能線は、人口流出などで利用者が減少して廃線寸前の状況だった。そこで、絶景のポテンシャルを活かし、1990年から観光列車「ノスタルジックビュートレイン」の運行を開始。さらに、1997年から「リゾートしらかみ」の運行を始め、五能線は人気のローカル線となった。現在は秋田―弘前・青森間を、五能線と奥羽本線経由で運行している。
「リゾートしらかみ」は特急ではなく快速列車なので、530円の指定席券(閑散期は330円)を購入すれば、青春18きっぷでも乗車できる。ただし、特定日運行の臨時列車なので、どの日に走るのかは前もって確認しておこう。
自然環境に優しい新型車両の「橅(ぶな)」
五能線の出発地である青森や秋田まで青春18きっぷで行くのは大変なので、出発地までは新幹線で移動する。
「リゾートしらかみ」の車両は「青池」「橅」「くまげら」の3種類あるが、車内販売を行っているのは「橅」だけなので、乗車前に秋田駅などで駅弁などを買っておきたい。
観光列車ということで窓は大きめに設えており、日本海や白神山地などの美しい風景が次々と展開されていく。どの車両も4両編成で、津軽弁の「語りべ」実演や津軽三味線の生演奏など、車内でイベントが催されることもある。
「リゾートしらかみ」の車両で最も新しいのは、2016年に運行を開始した「橅」。デザインは世界自然遺産の白神山地をモチーフにしたもので、車内の内装にはブナや秋田産の杉、青森ヒバなどが使われている。また、3号車の「ORAHO(おらほ)カウンター」では、白神山地の自然水で淹れたコーヒーや沿線の特産品が販売されている。
秋田を出発してからしばらくは内陸を進むが、能代から5駅先の東八森からは、海岸線に沿って列車が走っていく。地元とタイアップした観光体験メニューも豊富で、十二湖駅からの青池散策、ウェスパ椿山駅からの不老ふ死温泉入浴などが楽しめる。
そして、千畳敷(せんじょうじき)駅では一部の「リゾートしらかみ」が停車し、近くの千畳敷海岸を散策することができる。江戸時代の地震で隆起したと伝わる海岸段丘面で、さまざまな奇岩・怪岩が見られる。
五能線は1日で乗り通せる路線だが、しっかりと観光するなら2日間の行程を組むのもよい。余裕がある旅をエンジョイしよう。車に乗ったり、鯵ケ沢で下車してヒラメのヅケ丼を食べたり、鶴の舞橋や立佞武多(たちねぷた)の館などの五所川原周辺の観光を満喫するなど、余裕がある旅をエンジョイしよう。
ちなみに、青森県深浦町にある驫木(とどろき)駅はその景観の良さから、青春18きっぷのポスターに選ばれたこともある。何もない無人駅だが、ローカル線の旅情を楽しみたいなら、途中下車してのんびりするのもアリだ。
青春18きっぷ 移動ルート
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『おとなの青春18きっぷの旅 至高の列車紀行』
宝島社