否定の言葉を吐き続ける義両親に影響されていく夫
そこから週末は有香さんがメインに子育てをして、平日は旦那さまが子育てを担当。その他の家事は交代制で行うなど、ペースを掴むまでは臨機応変に対応していたそう。夫婦関係は結婚当初よりもうまくいくようになっていたと言います。遠方から義両親が遊びに来るまでは。
「義両親はやっと掴んだ夫婦のペースをすべて壊していきました。義両親は遠方で暮らしていて、私の体調不良とコロナ禍もあってずっと会っていなかったんです。それが昨年の9月の緊急事態宣言明けに遊びに来て、家事を率先してやっている息子の姿を見て鼻で笑うような感じで『母親はやっぱり強いか! 今から尻に敷かれるようじゃ夫婦生活が心配だな』と義父が言いました。私は遊びに来た期間だけ私が家事をすべて担ってやり過ごそうと思っていたのですが、夫は義父の言葉に言い返すように『今主夫は俺だから』と正直に言ってしまって……。そこからどうして?と質問攻めに遭い、すべてがバレました。
義父は怒り、夫のことを“恥”、“男じゃない”、“甲斐性なし”と罵り続けました。夫はその場では『もう放っておいてくれ』と義両親を追い出していたのですが」
その後も双方の携帯に夫婦生活を全否定するような内容が伝えられ続けます。それは義両親からだけでなく、親戚からもあったとのこと。それからしばらくして、楽しく生活していたはずだった旦那さまの態度が変わっていったと言います。
「お互いに何度もかかってくる電話を無視していたのですが、親族の電話を借りて別の番号でかけてきたり、義父の兄弟から注意されたり。その中で夫の口数は減っていき、部屋で1人で過ごす時間が増えたように思います。
今はどちらが家事をメイン、仕事をメインと決めずに協力して再度夫婦のよいペースを掴もうとやっていますが、私のほうが収入が多いのを夫は気にしているようです。義両親のことがあってから毎月の収支報告会に気まずい雰囲気が流れています」
近年は“主夫”という言葉も浸透してきて、子どもの送り迎えをしている父親の姿もよく見かけるようになったものの、まだまだ共働き夫婦が多く、家事育児をメインにする主夫の数は少ない。多様性を尊重しようとする世の中ながら、有香さん夫婦のように一番足を引っ張っているのは身近な存在かもしれません。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。