コロナ禍にあって、人とコミュニケーションをとる機会は以前より格段と少なくなってきています。しかし、人は「自分のことを話したい」という欲求を持っているといいます。人と会話する機会に話をうまく聞くことができれば、コミュニケーションの質が高まり、相手との関係を良好に保つことができるでしょう。

そこで、累計100万部のベストセラー『人は話し方が9割』の著者、永松茂久さんの『人は聞き方が9割』から、人とのコミュニケーションがうまくいく「聞き方」のコツをご紹介します。

文・永松茂久

お互いが緊張している日本人の初対面

「初対面だと緊張しちゃって、何を話せばいいのかよくわからないんです」
会話の悩みにおいて、一番と言っていいくらい聞くのがこの言葉です。
初対面というのは、当然相手のことをよく知りません。
ですから相手がどんな性格で、どんな会話をすればいいのか気後れしてしまう、これは世界中で見ても、特にシャイな日本人が持ってしまう象徴的な特徴と言っていいでしょう。

どんな場所でも、すれ違う人に「ハーイ」と声をかけたり、微笑んだりすることが日常的な習慣の欧米人に比べ、日本人は特に初対面を含むコミュニケーションが苦手分野に挙げられます。

「フランクにコミュニケーションを取るために、欧米のコミュニケーション術を学ぶべきだ」という理論もあります。しかし私は、それが現実的な解決策とは思えません。国民性に合っているような気がしないのです。

苦手なピッチャーより、いい音を鳴らすキャッチャーになろう

さて、ではどうすればいいのでしょうか?
私が提案したい解決策、それは、聞く力、周りの人に質問をして会話を広げる力を伸ばすことに特化する
ということです。

例えば、数人で会食をしている場所で考えてみましょう。
コミュニケーションは、野球に例えるととてもわかりやすいので、野球を使って説明します。
人が集まると、その中に1人や2人は自分の話をするのが得意な人がいるものです。
こういうタイプの人は、ポジションでいうと、まさにピッチャーです。
その人がボールを投げることによって、まずは会話が始まります。
この時、ピッチャーに一番必要な存在がいます。
おわかりですよね。キャッチャーです。
名キャッチャーと呼ばれる人は、ただボールを受けるだけでなく、「スパーン」とわざと音を鳴らしてボールを受ける技術に長けています。

ピッチャーのテンションを高めるために、わざと音をオーバーに鳴らすのです。
そして「ナイスボール!」と声をかけながらボールを返すことによって、さらにピッチャーの気持ちを高揚させるのです。

そしてキャッチャーというのは、ピッチャーが投げたボールをファースト、セカンド、サードに投げる選択権、そしてホームベースで最終的な締めの部分を司(つかさど)る権利を持っています。
受けたボールを、その場を拠点として扇(おうぎ)のように広げていくということを考えると、野球におけるキャッチャーのポジションは、まさに会話においては聞き役であると言えます。

日本人が本来一番得意なことを利用する

自分からアウトプットしていくのが苦手なら、無理してピッチャーになる必要はありません。
それより、
「飛んできたボール(話す人の言葉)に対して、いかにいい音を鳴らして受け取るか、そのボールをいかに他の塁に投げてゲーム(会話)を広げていくのか」
その技術を磨くことに集中すればいいのです。

いい発信者には、必ずと言っていいほど、いい受信者がいます。
逆を言えば、いい受信者がいるからこそ、発信者は安心して自分の話したいことを話すことができるのです。
古くから日本人には、自分の思いを一方的に発信する人は、単なるおしゃべりで底の浅い人と捉えられる文化がありました。

逆に言えば、人の話をしっかりと聞き、静かに受け止めることができる人を徳の高い人と捉える文化がありました。
その特性を一概に否定し、欧米風の「自分の思いを発信できる人がすごい人である」という思い込みにしばられるのをやめて、「話をしっかりと受け止めることができる人に価値がある」という日本人本来の得意な部分を見直していきましょう。

柔道や茶道、合気道……。日本には「道」がつく学びごとが数多くあります。
そしてこのほとんどの「道」の始まりは、まず「受け身」から始まる、という特性を持っています。
自分から発信するのではなく、まず相手の発信を受信することからすべてが始まります。
そういう面から考えても、日本人の「会話道」は聞き方から始まるのです。

100%好かれる聞き方のコツ

無理に話す力を磨くのではなく、日本人の得意な聞く力を伸ばす

イラスト ©久保久男/朝日メディアインターナショナル

* * *

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永松 茂久(ながまつ・しげひさ)
株式会社人財育成JAPAN 代表取締役。大分県中津市生まれ。2001年、わずか3坪のたこ焼きの行商から商売を始め、2003年に開店したダイニング陽なた家は、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店になる。自身の経験をもとに体系化した「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で多くの講演、セミナーを実施。「人の在り方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ45万人にのぼる。著作業では2020年、書籍の年間累計発行部数で65万部という記録を達成し、『人は話し方が9割』の単冊売り上げで2020年ビジネス書年間ランキング1位を獲得(日販調べ)。2021年には、同じく『人は話し方が9割』が2021年書籍の年間ベストセラーランキングで総合1位(日販調べ)、ビジネス書部門でも2020年に続き、2年連続1位(日販調べ)に輝く。トーハンでも2021年ビジネス書年間ランキング1位に。著書は『人は話し方が9割』『人は聞き方が9割』『喜ばれる人になりなさい』(すばる舎)など多数あり、累計発行部数は285万部を突破している。


 

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