コロナ禍にあって、人とのコミュニケーションは以前より格段と少なくなってきています。しかし、人は「自分のことを話したい」という欲求を持っているといいます。人の話をうまく聞くことができれば、コミュニケーションの質が高まり、相手との関係を良好に保つことができるでしょう。そこで、累計100万部のベストセラー『人は話し方が9割』の著者、永松茂久さんの新刊『人は聞き方が9割』から、人とのコミュニケーションがうまくいく「聞き方」のコツをご紹介します。
文・永松茂久
今、人が一番必要としているもの
2020年の初頭に始まった新型コロナウイルスの大パニック。間違いなく歴史の教科書に載るであろうこの一大事は、私たちの想像をはるかに超える長期戦になり、世の中に大きなダメージを与えました。
こうした背景も含め、私たちの生きる世の中、そして思考の中に大きくはびこった感情があります。
それは「不安」。
ここから先、自分たちの生活はどうなるのか?
仕事は? 世の中はどう変わっていくのか?
いつまでこのパニックは続くのか?
こうした数多くの不安が私たちの頭の中に居座ってしまいました。
もともと日本人はどちらかというと、老後の不安、職場の悩み、仕事の先行きなど、ただでさえ安全第一の不安体質な民族です。これに加え、コロナ禍がその気質をさらに強固にしました。
不安になれば、当然ですが、人が求めるものはその逆のものになります。
不安の逆にある、今、人が求めているもの、それは
「安心感」
です。
そしてこの安心感こそが、社会に対してだけでなく、ふだんの生活において私たちを取り巻く人間関係全般において、一番の基礎になるものなのです。
昔の偉い人が教えてくれた人間の欲求
これから「聞き方」について、いろんなことをお伝えしていくことになります。
その上で、本書の理解を深め、すぐ日常生活で使っていただくために、本を貫く1本の軸となる理論をインストールしてください。
理論といっても、とても簡単なことです。
それは
すべての人が一番初めに求めているもの、それは安心感であるということです。
人にはいろんな感情があります。プラスの感情だけを見ても、興奮、高揚、喜び、幸福、達成感など、他にもたくさんあります。
しかしその中で一番初めの基礎となるものであり、人が一番求めているもの、それは安心感なのです。
マズローという歴史的に有名な心理学者が人間の欲求を5段階に分けて表現したのですが、(生命の維持に最低限必要な「生理的欲求」をのぞいて)一番基礎になる欲求のベースを「安全の欲求」と表現しています。
このことからも、安心感という感情が私たちにとっての基礎になるということが証明されています。
つまり、人は安心感なくして他の感情を満たすことはできないのです。
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『人は聞き方が9割』(永松茂久 著)
すばる舎
永松 茂久(ながまつ・しげひさ)
株式会社人財育成JAPAN 代表取締役。大分県中津市生まれ。2001年、わずか3坪のたこ焼きの行商から商売を始め、2003年に開店したダイニング陽なた家は、口コミだけで県外から毎年1万人を集める大繁盛店になる。自身の経験をもとに体系化した「一流の人材を集めるのではなく、今いる人間を一流にする」というコンセプトのユニークな人材育成法には定評があり、全国で多くの講演、セミナーを実施。「人の在り方」を伝えるニューリーダーとして、多くの若者から圧倒的な支持を得ており、講演の累計動員数は延べ45万人にのぼる。著作業では2020年、書籍の年間累計発行部数で65万部という記録を達成し、『人は話し方が9割』の単冊売り上げで2020年ビジネス書年間ランキング1位を獲得(日販調べ)。2021年には、同じく『人は話し方が9割』が2021年書籍の年間ベストセラーランキングで総合1位(日販調べ)、ビジネス書部門でも2020年に続き、2年連続1位(日販調べ)に輝く。トーハンでも2021年ビジネス書年間ランキング1位に。著書は『人は話し方が9割』『人は聞き方が9割』『喜ばれる人になりなさい』(すばる舎)など多数あり、累計発行部数は285万部を突破している。