取材・文/沢木文
「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
敏恵さん(仮名・60歳)は、1年前に1歳年上の夫と結婚生活32年目に離婚した。27歳のひとり息子はすでに独立している。今、スーパーの総菜売り場で働き1年近くになるが、そこで出会った由美さん(仮名・62歳)との関係に悩んでいる。
【これまでの経緯は前編で】
美人で聡明で、優しそうな友人が孤立している理由
由美さんは底知れぬ魅力がある人だという。
「まず美人なんです。美人で頭がよくて、底知れぬパワーがあるんです。私に対しても“一緒に働く敏恵さんね。これからよろしくね”などとフレンドリーに話しかけてくれる。そして、“これ、よかったらどうぞ”と休憩室でお菓子をくれるんです」
そのお菓子は、コンビニやスーパーで売っているモノではなく、デパートで売っているブランドのものだという。
「だから、すごいな~って。社員さんを紹介してくれたり、その他のパートの仲間を紹介してくれて、由美さんのおかげで働きやすい環境にはなったと思います」
働いて1か月もすると、由美さんが孤立していることが、なんとなくわかってきたという。
「一緒に働いていて、この人は頭がいいとか、厳しいけれど信頼できる人がわかってくる。そういう人に限って、由美さんと距離を置いているんです。あからさまに無視していると思いました。私は、由美さんがこんないい人なのに孤立するのはおかしいことだと思い、なるべく由美さんの近くにいてあげようと思ったんです」
職場は一緒に仕事をするところであるからこそ、「みんな仲良く」というポリシーのようなものを持っていた。
「だから、仲を取り持つようなことをしたり、由美さんを無視する人と話しているときに、由美さんのことを伝えようとしていました。するとだいたい生返事が返って来る」
その間に、敏恵さんと由美さんの距離は縮まり、友情のようなものが芽生えてくる。ついに、食事をすることになった。
「そこで由美さんが20歳年下の社員さんとダブル不倫をしていることや、夫のDVを受けていること、お嬢さんが若くして亡くなったことなどを話してくれたんです。また、由美さんが持病をかかえていることも。そんな大変なことを打ち明けてくれるなんて、信頼されているんだと思いました」
【私が由美さんの力になりたい……次のページに続きます】