関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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妻は他校から人が見に来るほど美しい女子高生だった
今回の依頼者・信忠さん(仮名・62歳)は不動産関連会社に勤務しています。「妻のことで相談があります」と私たちの事務所にいらっしゃいました。まずは、夫婦のこれまでの歩みについて伺いました。
「同じ年の妻とは、結婚35年になります。高校3年生のときに出会い、交際を始めました。私が大学(超有名大学)に進学してからは、私に新しい彼女ができたりして、消滅したんですが、25歳のときに再会して、再び交際スタート。その時に息子を授かり、私が責任を取るように結婚したんです。でも初恋の相手と結婚できて、幸せでした。それを言葉にはできなかった」
信忠さんは真面目そうな印象で、表情も反応もかなり固い。
「大学まではよかったんですが、そこそこ大手の不動産関連会社に就職してからは、ホントに散々です。ノルマに追われて、パワハラに遭ったりして、40手前までは転職を繰り返していました。妻はそんな私が不満だったんでしょうね」
当時の不動産関連会社の営業ノルマの重さは今では考えられないほどだったと言います。
「早朝からお客様と打ち合わせ、それは日付をまたいでも行われました。上からはガンガン言われて、長男が生まれても、家に帰れない。くたくたな体を引きずって帰ってくると、妻に文句ばかり言われる。靴下を脱ぎ捨てただけで烈火のごとく怒られて、家を飛び出し車の中で寝たこともあります」
それでも妻と離婚しなかったのは、妻が高校時代のクラスのトップ・オブ・トップの高嶺の花だったからだそう。
「本当に美しくて、隣の学校から男子が来るような美少女だったんです。成績はそこそこでしたから、あまり有名ではない大学に進学したのです。彼女と同じ大学に行きたいために、志望校のランクを落とす男子もいたんですよ」
信忠さんも高校時代が人生のピークだったと自嘲します。学年一位の成績であり、スポーツも万能で生徒会長もしていた。今もシュッとしてカッコいい男性です。
「学校は簡単だからそれでいいんです。でも、社会人になったらそういうことではないんですよね」
【父親だけ外される家族のグループラインがある……次のページに続きます】