思春期の子どもには、意見は言わずに黙って見守ることが大切です
だから、こうした思春期の子どもに対しては、親は黙ってじっとその子を見守ってあげることが大切です。
なぜなら、この時期に子どもが悩んでいる問題は、親が意見を言ったとしても解決できるような問題ではないからです。そして、そのことは子ども自身がいちばんよくわかっています。
だから自分の問題に親から口出しされればされるほど、子どもはわずらわしく、うっとうしく思い、最悪の場合はそのいらだちが家庭内暴力となってしまうこともあるのです。
もし、子どもがいらだつ姿を目にしたら「ああ、この子は苦しんでいる、葛藤しているのだな」と思い、黙って見守ってあげてほしいですね。
子どもが何か尋ねてきたら、そのことに一生懸命答えてあげればいいと思います。しかし、求められていないのに、心配したり意見を言ったりする必要はありません。
親がすべきことは、ただひとつだけ。「見守っているよ」というメッセージを子どもに伝えていくことです。
そうすることで、大嵐のあとに快晴の日々が訪れるように、子どもの心が安定する時期は必ずやってきます。
そうして、荒れた日々を送った子どもというのは、社会と自分との接点も見出すことができるようになります。そのため、ニートやひきこもりにはなりません。
だから、親や周囲のご家族は、子どもの想い悩む姿を嘆かずに、むしろ、その時期を楽しむぐらいの気持ちで見守ってほしいのです。
思春期のお孫さんに意見してばかりいる息子さんや娘さんを見かけたら、おじいちゃんやおばあちゃんは、今まで解説してきたことを伝えていただきたいですね。
息子さんや娘さんの思春期を見守ってきた祖父母世代だからこそ言える、メッセージやアドバイスがあるんじゃないでしょうか。
思春期に親密な友人をつくるためには、学童期にたくさんの友だちとふれあい、遊ぶ体験が必要です
ただし、思春期に親密な友だちをつくるためには、小学生時代にいろいろな友だちと遊びながら、さまざまな経験をしておくことが必要です。
小学生時代に広く浅く、友だちと多くの経験をして、友だちに教えたり、教えられたりしていくうちに、自分はどういった仲間と意見が合うのか、価値観の波長が合う友だちというのはどんな人間なのかがわかるようになり、思春期に入ってから、自分と合う人間と深くつきあうことができるようになるからです。
ですから、小さなお子さんがいる家庭では、小学生のうちにできるだけたくさん、さまざまな友だちと遊べる環境づくりをしてほしいですね。
もし仮に、多くの友だちと接して遊ぶ体験が乏しく、思春期に気の合う仲間を探せない、つくれない場合は、精神神経症や心身症に陥るケースもあります。
佐々木正美(ささき・まさみ)
児童精神科医。1935年、群馬県前橋市生まれ。新潟大学医学部卒業。ブリティッシュ・コロンビア大学留学後、国立秩父学園、東京大学、東京女子医科大学、ノースカロライナ大学などにて、子どもの精神医療に従事する。臨床医として仕事をする傍ら、全国の保育園・幼稚園・学校・児童相談所などで勉強会、講演会を半世紀以上にわたりつづけた。2017年没。深い知識と豊富な臨床経験に基づいた育児書は、いまも子育てに悩む多くの親たちの信頼と支持を得ている。『子どもへのまなざし』《正・続・完》(福音館書店)、『育てたように子は育つ』(小学館文庫)、『ひとり親でも子どもは健全に育ちます』(小学館)など著書多数。
『人生のおさらい 自分の番を生きるということ』
著/佐々木正美 書/相田みつを 監/相田一人 小学館刊
佐々木正美が語る幸せな人生のしめくくり方
癒やしの精神科医が、81歳を迎えた自身の人生を振り返りながら、人生の終盤をいかに生きるかを、相田みつをの言葉と書にのせて綴る。巻末には、相田みつを美術館館長が語る「父・相田みつをと佐々木正美さん」を収録。
構成・文/山津京子(やまつ・きょうこ)
フリーランス・ライター&編集者。出版社勤務を経て、現在に至る。主に育児・食と旅の記事を担当。佐々木正美氏とは取材を通して20年余りの交流があり、『ひとり親でも子どもは健全に育ちます』(小学館)、『人生のおさらい 自分の番を生きるということ』(小学館)の構成を手掛けた。