高齢化社会が進む中、介護を社会全体で支える目的で創設された介護保険制度。施行後、すでに20年以上が経ちました。自分自身あるいは家族が年齢を重ね、より身近に感じるようになった方もおられるのではないでしょうか。
そこで、介護保険制度のしくみや納付方法まで、アクティブシニアのライフサポートを行う株式会社ユメコム代表の橋本珠美が、豊富な経験や事例をもとにアドバイスを申し上げます。
目次
介護保険制度とは
介護保険制度のしくみ
介護保険料の納付方法
利用の条件
介護保険料を支払う期間
介護保険料の金額
3年ごとに見直される介護保険制度
まとめ
介護保険制度とは
介護保険制度とは、高齢者が適切な介護サービスを受けられるように社会全体で支え合う制度です。少子高齢化が進み、介護を必要とする高齢者の増加、介護サービスの必要性が高まり、介護保険制度が誕生しました。この制度がスタートしたことにより、要介護認定をされることで、介護サービスを受けられるようになったのです。
介護保険制度のしくみ
介護保険の目的は、介護を必要とする人やその家族の経済的負担が軽くなるように社会全体で支えることです。具体的には、公的介護保険サービスをそれぞれの料金の1~3割(自己負担割合)の負担のみで利用できるしくみです。自己負担割合による額以外の利用料は、介護保険料と税金で補われます。
介護保険を運営しているのは市区町村。介護保険用語では、運営者である市区町村を「保険者」といいます。財源も保険者がそれぞれ管理していますが、50%は被保険者が支払う介護保険料でまかなわれているのです。25%は国が負担し、残りの25%は都道府県と市区町村で折半するしくみになっていますよ。
≪介護保険の財源の内訳≫
介護保険料(第1号第2号被保険者)から 50.0%
税金から 50.0%
【税金内訳】
国 25.0%
都道府県 12.5%
市町村(特別区を含む)12.5%
年齢によって異なる2種類の被保険者
介護保険料を支払う人を被保険者といい、年齢によって「第1号被保険者」「第2号被保険者」の2種類に分かれています。それぞれの関係性については、以下の図でご確認ください。
介護保険料の納付方法
第1号被保険者と第2号被保険者、それぞれの納付方法をご紹介します。
第1号被保険者
65歳以上の人が「第1号被保険者」です。65歳の誕生月になると「介護保険被保険者証」が交付され、介護保険料は、基本、年金から天引きされます。
第2号被保険者
40歳から64歳までの公的医療保険加入者が「第2号被保険者」です。日本ではすべての国民が何らかの公的医療保険に加入するという、「国民皆保険制度」があります。公的医療保険の主なものとしては、会社員が勤務先を通じて加入する「健康保険」と、自営業などの人が自治体を通じて加入する「国民健康保険」があります。それらの公的医療保険料とあわせて、介護保険料が徴収されています。つまり、40歳から64歳までの一人ひとりが介護保険の被保険者となるということです。
利用の条件
介護保険の利用条件を確認しましょう。
第1号被保険者
要介護認定または要支援認定を受けた場合は、介護保険サービスが利用可能です。介護保険サービスを利用していても、保険料の納付義務があります。
第2号被保険者
特定疾病に定められている16種類の病気が原因で要介護認定や要支援認定を受けた場合のみ、サービスを利用することができます。
第2号被保険者が介護保険対象となる特定疾病
• 末期がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの)
• 関節リウマチ
• 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
• 後縦靱帯骨化症
• 骨折を伴う骨粗鬆症
• 初老期における認知症
• 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
• 脊髄小脳変性症
• 脊柱管狭窄症
• 早老症
• 多系統萎縮症
• 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
• 脳血管疾患
• 閉塞性動脈硬化症
• 慢性閉塞性肺疾患
• 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険料を支払う期間
介護保険料は、「満40歳に達したときから生涯にわたって」払い続けます。「満40歳に達したとき」とは「40歳の誕生日の前日」のことです。つまり1日生まれの人は40歳の誕生日の前月から、それ以外の人は40歳の誕生月から徴収されます。
介護保険料の金額
金額面でも、第1号か第2号かという被保険者区分が大きく関係しています。保険料の計算方法も支払い方も異なります。それぞれ見ていきましょう。
第2号被保険者の保険料の目安
会社員や公務員のように給料をもらっている人の介護保険料は、健康保険料や厚生年金保険料と同じく「標準報酬月額」をもとに計算されます。標準報酬月額とは、4月から6月の報酬を平均した月額により、等級にしたもの。基準となる標準報酬月額表は都道府県ごと、また所属する健康保険組合ごとにも異なり、介護保険料の金額もそれぞれ違います。
介護保険料は健康保険料と一緒に「給与天引き」で納付
給料をもらっている場合、介護保険料は健康保険料と併せて徴収されます。健康保険料と同じく介護保険料も天引きされますので、自ら納付するための手続きは必要ありません。
なお、健康保険は職業によって「共済組合」「船員保険」など名称が異なるものがありますが、給料をもらっている人は給与から天引きされるというしくみは同じです。
自営業の場合は国民健康保険に上乗せ
自営業の場合も、国民健康保険料に介護保険料を上乗せして納付します。
第1号被保険者の介護保険料
第1号被保険者、65歳以上の人が納める介護保険料は、自治体ごとに決められています。基準となるのは、介護保険の財源のうち第1号被保険者が負担すべき金額を、第1号被保険者の人数で割った金額です。
その上で、所得に応じて段階的に定められています。段階がいくつ設けられているか、そして保険料も自治体によって異なります。
第1号被保険者の介護保険料の納付方法は、公的年金から天引きされる「特別徴収」が基本です。年金が2か月に1回給付されるたびに、2か月分の介護保険料が徴収されます。ただし、年金額が少額である場合や年度の途中で65歳になった場合などは、納付書または口座振替で納める「普通徴収」となります。
3年ごとに見直される介護保険制度
介護保険制度は、3年ごとに見直されています。介護保険を運営する自治体は、国から出される介護保険制度の見直しに合わせて介護保険事業計画を策定し、3年ごとに必要な費用や介護保険料率を決定、見直しているのです。
また、介護保険料は「単年度で収支が均衡するように保険者が定めること」となっているため、保険料率は毎年の収支に合わせて変わる可能性があります。実際に、ほとんどの自治体=保険者で、毎年保険料は上昇しています。
まとめ
いかがでしたか。すでに聞き馴染みのある「介護保険制度」のしくみや納付方法、保険料などについて解説しました。3年ごとに見直される制度がどのように変化していくのかも注目していきましょう。
そして、3人に1人が高齢者と言われる超高齢化社会となった今、一人ひとりが要介護状態を避けられるように健康維持、体力維持のため、日々小さな努力を続けることも大切ですね。
●構成・編集/内藤 知夏(京都メディアライン・http://kyotomedialine.com)
●取材協力/橋本 珠美(はしもと たまみ)
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)