楽しかった母親と行ったドライブ旅行。ペーパードライバーの母親は運転席でいつもガチガチだった
健太郎さんを叱ることはなかった母親ですが、決して放任主義というわけではなかったそう。覚えているのは超安全運転のドライブ旅行だったと、健太郎さんは当時を振り返ります。
「母親にはテストの点は逐一チェックされていたし、学校行事にもちゃんと参加してくれていました。そこは親族の会社だから都合がつきやすかったんじゃないかな。よく母親と旅行に行ったことを覚えています。従妹の家の車を借りて、2人でドライブ旅行です。母親は絵に描いたようなペーパードライバーだったから、すごく安全運転で。ドライブの本を買って出かけていたんですが、いつも目的地までの所要時間を大幅にオーバーしていましたね(苦笑)。でも、どんなに疲れていたとしても、僕とした約束は必ず守ってくれた。そんな母親だったんです」
反抗期はなく、母親と外出することを避けた期間も家では仲良し。その関係性は高校生に進学した後も続き、初めてできた彼女も母親に紹介するなど、一度も不仲になったことはないと言います。
「マザコンと言われてしまうから、自分の意思に関係なく母親を避ける時期って男性には必ずあると思うんですよ。特に学校に母子家庭の子なんてほとんどいなかったから、僕は他の家より母親との絆が強いと思われている節があったし。だから外ではちょっと強く突き放すこともありました。でも、母親はそこまで干渉してこなかったから、そのことが不仲につながるようなことはありませんでした。
高校の時に初めて彼女ができたんですが、彼女が家に行きたいと言ったから、そのまま躊躇することなく連れて行きました。まぁ最初は母親が帰って来る前に帰そうと思っていたんですが、バッティングしちゃって(苦笑)。僕にはそうでもないのに、彼女には母親はグイグイくるタイプだったみたいで、そのまま晩御飯まで彼女を引き留めていました。その後、すっかり母親と意気投合した彼女はちょくちょく来るようになっていました」
母親との仲は大人になってからも良好。しかし、自身が父親になった時、自分の中にまったくない父親像に戸惑い始めます。
【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。