非正規公務員のひどすぎる雇用の現実
娘は自治体が運営する施設で、非正規雇用の窓口職員として時給で働いていたという。
「見た目は公務員なんですよ。だって職員のIDカードを持って、フルタイムで働いているんですから。でも、娘から聞くと、正規職員が何もしないところで、非正規ばかりが体と頭を使って働いている。会計年度で次も雇われるかどうかが決まるから、非正規職員同士の足の引っ張り合いもあったと言います。当然、セクハラやパワハラも起こる。短期契約だから不安定ですよね。娘は女性や貧困層を支援する法律相談の窓口で働いていたそうなんですが、相談者から暴言を浴びせられても、誰もかばってくれないなど、じわじわとメンタルが追い詰められていったといいます」
それなのに、年収は200万円程度。まかりなりにも“公務員”になった可愛い娘が、そんな思いをしているとは全く思わなかったという。
「だって、公務員ですよ。私たちの時代は、安定の代名詞。娘から、自治体で働いていることを聞いて、非正規ということも知っていたけれど、民間よりは安定しているだろうし、待遇もいいだろうと思っていました。何せ、“親方日の丸”ですからね。私は母がシングルマザーだったのですが、母から“資格を取って、公務に関われば、贅沢はできなくとも子供一人が食べていける”と言われていました。私ができなかったことを、娘が果たしてくれたと思って、嬉しかったんですよ」
しかし、娘は心身のエネルギーを使い果たし、カラカラの状態になるまで、働かされていた。
「がんばりやさんなので。『あゝ野麦峠』っていう昔の映画を思い出しました。ひどい世の中ですよ」
【緊急事態宣言が明けなければ、「実質的失業状態」が続く~その2~に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。