取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、都内の有名企業で働いている美嘉さん(仮名・36歳)。愛知県出身で、両親と4歳上に兄、2歳下に妹のいる5人家族。家で個人塾を経営する父親からは、家が寛げる場所じゃなかったと振り返るほど厳しく育てられます。しかしそのおかげもあり、3兄妹ともに有名大学へ進学して、全員が独立。妹のできちゃった婚のときに見たのは心の底から喜ぶ父親の顔と、反対に「かわいそう」という言葉を使った母親でした。
「学校行事などには自営業だった父親が積極的に参加していて、母親は家のことをしていた感じです。前へ出たがる父親と後ろで支える母親というような関係はうまくバランスを保っているようで、夫婦仲は悪くなかったと思います。父親は厳しく、母親は優しい印象だったんですが、妹の結婚で見えたのは真逆の反応でした。母親は私にだけ『一生懸命育てて、いい大学にまで行かせてあげたのに2年で結婚するとか、お父さんがかわいそう』と言いました」
兄妹が相次いで結婚したことで、両親は独身の娘を心配するように
「かわいそう」と発言した母親に対し、喜んであげてよと笑顔でかわしたという美嘉さん。その後も大きな揉め事はなく、妹は結婚。翌年には孫が誕生します。
「孫の誕生は家族の一大イベントで、生まれたばかりのクシャクシャ顔もめちゃくちゃかわいかったですよ。最初はあんなことを言っていた母親も笑顔で喜んでいて、妹の旦那さんが私たちの実家から近い場所に新居を構えてくれたこともあって、両親と妹夫婦は良好な関係を築いていました。私は東京で暮らしていたので、姪からしたらたまに帰ってきてはベタベタしてくる伯母ちゃんって感じですかね(苦笑)。元々子どもはあんまり好きじゃなかったんですけど、妹の子は本当にかわいくて。私が何でも買ってあげていたから非常に懐いてくれていましたしね」
続いて、美嘉さんが30歳のときに兄が結婚。そのときに初めて両親から結婚へのプッシュがあったと言います。
「4つ上の兄が私より若い奥さんをもらって、そのときには妹には2人目がいてと、両親も籍をいれた子ども達だけをただ喜んでいるわけにはいかないと思ったんでしょうね。私も30歳になっていましたし。でも、独身の友人たちを見ると、私は親からしつこく結婚しろと言われているほうではなくて、妙齢の娘に対する親の普通の対応だと思って受け入れていました。家族との会話の中で話すくらいで、親族の前で独身を非難されるなんてこともありませんでしたから」
【「かわいそう」という母親に「あの子が選んだ道」と認めてくれた父親。次ページに続きます】