文/印南敦史
いうまでもなく定年は、サラリーマンにとって大きな問題である。「定年対策本」のような書籍が相次いで出版され、さまざまな定年準備セミナーが開催されるのも、“その先”の生き方に不安を抱えた人が多いからにほかならない。
だが、現在68歳だという『定年前、しなくていい5つのこと』(大江英樹 著、光文社新書)の著者は、かつてそれらの書籍に目を通し、セミナーを受けてみたりした結果、「語られていることには正しくないことが多い」と感じたのだそうだ。
なぜなら、定年対策本やセミナーでは、実際に定年を経験したことがない人や、定年経験はあってもかなり昔のことだったりする人が語っているから。だとすれば、しっくりこなくても当然だ。
しかもご存知のとおり、そういった本やセミナーでは必要以上に不安を煽りもする。だが著者は自身の体験から、定年はそれほど悲惨なものではないと感じているのだという。もちろん定年を迎えるまでは不安は大きいものの、経験してみると、さほど心配する必要がないことがわかると。
「むしろ、そうした不安に煽られて、間違った行動を起こす方がよほど危険なことだと思います」という主張には、たしかに強い説得力がある。
そこで本書では、いまの時代における「定年後のリアル」を明らかにし、「間違った定年の常識」に惑わされないためのヒントを提示しているのである。
ちなみにタイトルにある「定年前、しなくていい5つのこと」とは、
・お金の心配、する必要はナシ!
・サラリーマン脳は捨てよう!
・夫婦で旅行なんて行かなくてもいい
・地域コミュニティとは付き合わなくてもいい!
・趣味がなくても一向に平気!
と、定年後の生き方に関するこれまでの“常識”を一蹴するようなものばかり。それぞれが章立てされており、ここまで断言する理由が明確に、そして痛快に語られている。この場で“チラ見”して済むようなものではないだけに、ぜひともじっくり読み込んでみることをお勧めする。
だが、上記5項目以外にもみるべきポイントは多い。たとえば無視できないのが、第6章「でも、これだけはやっておこう」だ。今回はそのなかから、「ちょっと無理する日常生活で健康維持」に焦点を当ててみたい。
著者が受けたセミナーはほとんどが役に立つものではなかったというが、そんななかで唯一役立ったのが、スポーツ医学を専門とする医師の話だったそうだ。健康を維持するためには、「ちょっと無理する日常生活を続けなさい」という話が、心に響いたというのである。
【 ジョギングをするとかジムに通うというようなことだけではない。 次ページに続きます】