文/山下隆盛
リフォームが無駄に!? 「家の2000年問題」に要注意!
家の劣化を早めるサイディングの直張りに注意!
まず、皆さん、このチェックリストをやってみてください。
あなたの家は大丈夫? 以上のうち1つでも当てはまる人はすぐ検査を!!
「家の2000年問題」チェックリスト
2005年までに外壁がサイディングの家を建てた。なおかつ、
□ 塗り替えて2.3年で塗装がはがれる
□ 塗膜が浮き上がっている
□ サイディング自体が膨れている
□ 土台と外壁の間に定規を入れて18mm未満しか入らない
もし、このチェック表に当てはまるならば、家を長持ちさせるためにも、なるべく早いうちに、信頼できる専門工事会社に診断やメンテナンスを依頼することをおすすめします。
なぜなら、「家の2000年問題」の心配があるからです。
2000年以前に外壁にサイディングを使っている家は、サイディングの基材、さらにその奥の構造材にまでダメージが蓄積しやすい「直張り工法」で施工されている可能性が高いからです。
2000年以前と、2000年以後で、何がそれほど違うのか?
両者を分けるのは、2000(平成12)年4月に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」、いわゆる「住宅品確法」に準じているかどうかです。
住宅品確法では、「劣化軽減措置」の1つとして、構造材と外壁材の間の空気を流通させる「外壁通気構法(通気構法)」の仕様が評価基準に規定されました。
また、現在の住宅保証制度においても、外壁をサイディングにする場合には、通気構法で施工することが保証条件となっています。
しかし、住宅品確法が施行される2000年以前には、ほとんどの家の外壁は、外壁通気構法ではなく、「直張り工法」が採用されているのです。
しかも、住宅品確法では評価基準に従わなくても罰則などは設けられていなかったため、実際には2004~2005年ごろまで、一部では直張りの施工が続いていました。
現在、外壁にサイディングを採用している住宅は、日本全国で2000万戸ほどあるといわれています。
残念ながら、そのうちの3分の2程度が、サイディングを直張りで施工していると考えられるのです。
通気構法なら、雨水も家の中の湿気も排出可能
この2つの工法の大きな違いは、通気性です。
「外壁通気構法」では、次の図のように、胴縁と呼ばれる素材で、構造材(柱など、建物を支える骨組みにあたる部分に使われる材料)と外壁材の間に空気が流れる層(通気層)をつくり、その最下部の換気口から空気を取り入れ、軒裏や棟換気(屋根の頂部にある換気のための部材)から排出します。
また、サイディングと構造材の間には、水は通さず湿気だけを通し家の中の湿気を放出する透湿防水シートを、構造材の外側に張りつけています。
その、透湿防水シートを通って出た湿気も、通気構法であれば、軒裏や棟換気から排出されるのです。
まとめると、通気構法には、次のようなメリットがあります。
・サイディングのすき間などから浸入した雨水を構造材まで届かせず、屋外に排出する
・家の中で発生した湿気を構造材の外まで排出することで、構造材の乾燥を保ち、結露を防ぐ
・通気層の遮熱効果によって、外気温の影響を受けにくくなり、省エネになる
直張りで施工した外壁は、ぴったりと構造材にくっついています。
空気の流れる層がありません。
そのため、サイディングのすき間から浸入した雨水や、家の中から排出された湿気がサイディングの裏側と構造材の間にとどまり、サイディングの基材ばかりでなく、構造材まで劣化させてしまうこともあるのです。
下の写真を見てください。
直張り工法の外壁をはがしたものです。
構造材として使われていた構造用合板や柱などが腐っています。
こうなると、家の耐久性もかなり落ちていますし、大がかりなメンテナンスが必要です。
そして、サイディングが湿っていると、いくら塗り替えても、すぐに塗膜がはがれてしまう可能性があります。
無駄なリフォーム費用をかけてしまうことにもなります。
外壁のアンチエイジングに最適なのは塗り替え? それとも、張り替え?
劣化しているのが外壁の表面だけなら塗装でOK
外壁のメンテナンスに最適なのは、塗り替えか? それとも張り替えか?
簡単にいえば、外壁の表面だけが劣化している場合には塗り替え、それ以外の部材まで劣化している場合には張り替えが最適なメンテナンスの方法となります。
それ以外の部材まで劣化している場合というのは、主に次の5つのケースです。
・サイディングの基材、または表面の塗膜の状態が悪く水を多く含んでいる
・胴縁、柱、筋かい、土台などの下地木材が腐っている
・断熱材がぬれていたり、すき間があったりする
・外壁や屋根、バルコニーから雨漏りをしている
・直張りで施工されている
この状態になったら、塗り替えをしても、サイディングの性能は戻らず、塗膜もはがれやすくなってしまいます。
こうしたケースに当てはまるときには、塗り替えはおすすめできません。
施工後、短期間で問題が発生する可能性が高く、結果的に補修を繰り返さなければならなくなってしまいます。
そのぶん、補修の費用も余計にかかります。 しかも、外壁の基材や下地木材、断熱材の劣化は放置されるので、家の寿命も縮まるのです。
外壁のメンテナンスは塗装だけと考えず、張り替えも視野に入れながら、検討することが大切です。
まずは、次の写真のような状態になっていないか、確認してください。
塗膜がはがれたり、膨れ上がったりしています。
【こうなっていたら張り替えを!!】
このような状態であれば、張り替えが必要になる可能性があります。
また、透湿防水紙が劣化している可能性があるので、築20年経ったら、張り替えを考えたほうがいいかもしれません。
不安なようでしたら、業者に頼んで見てもらうのがよいでしょう。
ただ、知識がない業者だと、それでも塗ってしまう可能性があります。
もしも塗ると判断された場合は必ず根拠を出してもらってください。本来であれば、はがし検査という外壁の一部をはがして検査する方法や、サーモグラフィーなどを用いて、調べる必要があります。
「職人のカン」とか、「長年見てきてわかるんです」というのは、この件に関してだけは、信用しないほうがいいでしょう。
山下 隆盛 /ヤマテック株式会社代表取締役社長。一般社団法人木造住宅塗装リフォーム協会(国交省認定団体)理事。NPO法人外装エコロジーシステム理事長。建築士。ファイナンシャルプランナー(FP)。1969年生まれ。神奈川県出身。大学卒業後、半導体業界へ就職。1998年に父親が起こしたばかりのヤマテックに入社。外装工事部門を立ち上げ、現在、神奈川県の県央エリアでは、外壁サイディング・屋根の施工数NO.1企業へと成長させる。長年、家のアンチエイジングのためのメンテナンスリフォームを提唱。さらに、外壁サイディング廃材の有効的な利用法を考えるNPO法人外装エコロジーシステム理事長を務めるなど、SDGsにも積極的に取り組む 。