文/山下隆盛

リフォームに精通した各専門工事会社に依頼を

専門工事会社は、知識、技術に加え、現場での経験も豊富

家のアンチエイジングのために、外壁と屋根のリフォームをする。
そのときに一番大切なのは、業者選びです。

リフォームには、確かな定価というものがないので、業者によって値段もかなり異なります。
また、悪徳業者による手抜き工事、悪徳ではなくとも、知識不足で誤った工事が行われる心配もあります。
余計にお金がかかるだけでなく、リフォームをしたことで、逆に家の寿命が縮まってしまうということも考えられるのです。

そこで、この章では、業者の選び方から説明していきます。

一口にリフォームを手がけている業者といっても、さまざまなタイプの業者があります。
代表的な業者は、次のとおりです。

・専門工事会社
・工務店・ハウスメーカー
・設備会社
・リフォーム営業会社
・購入先不動産会社
・インテリアショップ・家具メーカー

これだけさまざまな業者があって、それぞれに異なる特徴があるため、依頼するほうとしては迷ってしまうかもしれません。

ただ、自分が何を第一の目的としてリフォームしたいのかを考えれば、優先順位はおのずと決まってきます。
これまでもお話ししてきたように、家にはさまざまな部位があり、そこで使われる構法や材料は多岐にわたります。

いわゆる「何でも屋」的な業者では、それぞれの部位のリフォームに本当に必要な専門的知識・技術を十分に備えている保証がありません。
また、リフォーム営業会社や大手ハウスメーカーは、自社内に職人を抱えていないことがほとんどで、現場レベルでの経験が蓄積・共有されていない点に不安が残ります。
なによりも、職人を抱えていないため、自分たちの利益をプラスした状態で、下請け業者に工事を依頼しています。

施工内容に比して補修費用が割高になりがちですし、もし高くないとしても、実際に工事をする業者には、相場より安く依頼されているわけですから、その分手抜きをされる心配が出てきます。
そうすると、施工内容はもちろん、アフターケアやメンテナンス計画まで含めて、しっかりとしたリフォームの実現を目的とするのなら、やはり、職人を抱えているその道のエキスパートに依頼するのがベストの選択です。

つまり、外壁・屋根などの外装関係は専門工事会社、キッチン・バスルーム・トイレ・洗面所などの水回り設備は専門工事会社または設備会社、それ以外の内装関係は実作業にあたる大工との結びつきが強い工務店にそれぞれ依頼すると、満足度の高い結果が得られやすくなります。

万一のトラブルにも、リフォーム瑕疵保険なら安心

しっかりリフォームを目指すと、そのときの家の劣化の状態によっては、工事の規模が大きくなることもあります。

そうしたときにぜひ利用してほしいのが、リフォーム瑕疵保険です。
簡単にいえば、家電についている製品保証の家版と考えてください。
リフォーム瑕疵保険は、信頼できる業者を探す上で、役に立ちます。
リフォーム瑕疵保険に加入するためには、依頼する相手の業者が事前にリフォーム瑕疵保険に登録していなければなりません。

そのため、リフォーム瑕疵保険に登録していない業者がすべていい加減だとはいえないまでも、登録している業者には一定の信頼がおけます。
リフォーム瑕疵保険に登録している業者かどうかは、一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会ホームページで検索して、確認することができます。
もう少し説明をしておくと、リフォーム瑕疵保険は、リフォーム時の検査と保証をセットにした保険制度です。

保険は、住宅専門の保険会社が引き受けます。
依頼したリフォーム業者がリフォーム瑕疵保険に登録していれば、後日、欠陥が見つかった際、補修費用などの保険金が業者に支払われ、家の持ち主は無償で直してもらうことができます。
万一、業者が倒産した場合には、保険金は家の持ち主に直接支払われるので、安心です。
リフォーム瑕疵保険への加入は、着工前の申し込みが必要となります。
リフォームが大がかりになりそうで、高額な費用が見込まれるときには、工事契約前に業者と相談しておくとよいでしょう。

訪問営業のリフォーム会社は断ったほうが無難

1万件を超える苦情がいまだに……

以前よりは減りましたが、今でも、メディア、そして周りのお客さまなどから、悪徳リフォーム会社にだまされたという話を耳にすることがあります。

同業者として、本当に恥ずかしく、また申し訳ない気持ちになります。

初めて私たちにご依頼してくる方々などは、面と向かって言葉にこそしないものの、心のどこかに「だまされるんじゃないか」と不安を抱えている様子が見てとれます。

そのような業界全体への不信感が、リフォームを遠ざける一因にもなっているのではないでしょうか。
本当にまじめに取り組んでいる業者にしてみたら、いい迷惑でしかありません。
ぜひ、皆さんに安心してリフォームをしてもらいたい。
そこで、悪徳業者に引っかからないために、いくつか知っておいてほしいことがあります。

まず、訪問販売や「ちょっと通りかかって、パッと見たんですけど、ずいぶんと傷んでいるようで」などと、こちらが頼んでもいないのに、突然訪れて、危機感をあおるような言葉を投げつける業者は、避けたほうが無難です。

また、近所でリフォームしているお宅を狙って「ちょっと最近、近くでリフォームをしていまして、お話だけでもさせてください」とやってくる話も聞きます。

近所の方が依頼する業者なら信頼できるだろうと、だまされてしまうこともあるようです。
独立行政法人国民生活センターのホームページによると、2020年3月31日までの集計で、昨年度、訪問販売がらみで、7467件、点検商法で5364件、苦情が消費者生活センターに寄せられています。

業者が悪いケースばかりではなく、単にコミュニケーションの行き違いなどもあったと思いますが、せっかく一生懸命蓄えたお金を無駄にしないためにも、突然やってくる業者は避けるのが無難です。

いいインスペクション業者を見分けて、損をしない

向こうから調べさせてくれという業者はNG

インスペクション、つまり家の健康診断を受けることの重要性を語ってきましたが、それはどんな業者に依頼すればいいのでしょうか。

繰り返しになりますが、「点検します」と、突然わざわざ訪問営業してくる業者にインスペクションさせるのは、要注意です。
なかには、シロアリの卵をまいていくという、悪質な業者もいるようです。

心配な場合は公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営している「住まいるダイヤル」や市の消費生活センターなどに相談するのも、よいでしょう。

さて、それでは、インスペクション業者は、どう選べばいいのか。

1つの基準になるのが、建築業許可を得ている会社、そして社会保険に加入している会社になります。
また、あくまでも基準の1つと考えていただきたいのですが、点検後、築10年未満にもかかわらず、やたらと「安全のために塗りましょう」とすすめてくる業者、すぐに「壊れます」と口にする業者は、少し気をつけたほうがいいかもしれません。

早めに塗ることはいいことですが、さほど汚れていない、劣化も見当たらないときには塗らなくても大丈夫です。

また、「壊れる」というのはよっぽどのことです。

人が住んでいて、災害にあったとき以外で、突然家が壊れて下敷きになってしまったという話は聞きませんよね。
「災害などがあったときに、壊れてしまう可能性がある」というのなら、納得もできるのですが……。
いずれにしても、明確な理由も示さないのに、必要以上に恐怖心をあおる業者には、注意してください。

足場費用無料など、大幅な値引き業者は避ける

大幅値引きの裏には手抜きがひそんでいる

私ども専門工事会社でも当然、手がける作業の分だけ、コストがかかります。

上まで塗るための足場を組むのにも、もちろんお金がかかります。
それなのに、その分の費用がかからないというのは、現実問題としてありえません。
つまり、その分、別のところで手を抜いていると考えるのが自然です。
そのほか、「今、キャンペーン中で、すぐに契約をしたら、大幅に値引きしますよ」という業者にも、同じことがいえます。

費用を少しでも安くすませようとして、そうした業者にリフォームを頼んでしまうと、結局、のちのち余計にお金がかかってしまうことになりかねません。

逆に、「相見積もりをとってみて、他社のほうが安かったら、値引いてくれませんか?」と聞いたときに、即答しなかったり、できないと断ったりする業者は、むしろ信用できる業者である可能性が高いです。

見積書にある一式という項目には要注意

手抜きとぼったくりを防止する質問

正直、家のリフォームのことを全部理解するというのはかなり難しく、そのような人はほとんどいません。
だからこそ、業者は、お客さまにはわからないと思って値段を上乗せしたり、作業の手を抜いたりすることがあるのです。

見積もりをもらったときに、外壁工事一式というざっくりとした見積もりしか出していない業者には注意したほうがよいでしょう。

といっても、「細かいところまで記載しても、お客さまには理解しづらいだろう」と考えて、省略している場合もあります。

そこは、どういうことをするのか、丁寧に聞いてみてください。
外壁なら、

「これは、シーリングの打ち直し(取り替え)も入っているんですか?」
「何回塗るのですか?」

という2つの質問は必ずしてください。

シーリングの打ち直しは、塗装同様、外壁工事には不可欠な作業なので、ここを適当にごまかす業者は避けたほうがいいでしょう。

また、外壁は、下塗り、中塗り、上塗りと、3回塗るのが基本です。

「3回ごとに写真を撮ってもらえますか?」と言って、素直に引き受けてくれる業者なら、信頼できます。

屋根におけるキラーフレーズは次の3つになります。
遠慮などせず、どんどん尋ねましょう。

「足場を組んで施工しますか?」
「えん切りは何で行いますか?」
(ふき替えの場合)「防水紙の写真を撮っていただけますか?」

という3点については、必ず聞いてみてください。

足場を組まずに施工するのは、安全意識が低い業者です。
そんな業者は手抜きをしがちなので、気をつけましょう。

えん切りというのは、屋根の水はけをよくするもので、スレートぶきの屋根の塗り替えには欠かせません。
これは通常、タスペーサーという屋根材と屋根材の間に隙間をあける道具を使って行います。
ストレート葺きの屋根なのに明確な答えが返ってこないようなら、その業者を100%信頼するのは危険かもしれません。

また、屋根の防水紙は、前述したとおり、劣化するものです。
ふき替えの場合は、必ず、確認、報告してもらってください。

問題がないのに防水紙を張り替えられたり、逆に防水紙が破れているのに、そのままふき替えだけされたりするのは、ムダにお金をかけることになり、大きな損失です。

「施工中の家を見せていただけませんか」は、最高のキラーフレーズ

現場がきれいで、きびきび動く職人は、信用していい

「今、施工中のところを見せていただけないですか?」
念を押すのであれば、こう尋ねてみてください。

工事の善し悪しまでは判断できないかもしれませんが、いい仕事をしているかどうかは、意外に現場に表れているものです。

あちこちにゴミが散らかっていないかとか、職人がきびきびと動いているかなどをチェック。できれば、別の日に、今度はこっそり訪ねてみてください。

なぜなら、お客さまの訪れるとわかっている日だけ、しっかりと振る舞っている可能性があるからです。

ちょっとした抜き打ち検査。多少の時間はかかることになりますが、1日、2日で劣化がそれほど進むわけではありません。
業者選びは、急いで決断せず、納得するまでじっくりと慎重に行うようにしましょう。

山下 隆盛 /ヤマテック株式会社代表取締役社長。一般社団法人木造住宅塗装リフォーム協会(国交省認定団体)理事。NPO法人外装エコロジーシステム理事長。建築士。ファイナンシャルプランナー(FP)。1969年生まれ。神奈川県出身。大学卒業後、半導体業界へ就職。1998年に父親が起こしたばかりのヤマテックに入社。外装工事部門を立ち上げ、現在、神奈川県の県央エリアでは、外壁サイディング・屋根の施工数NO.1企業へと成長させる。長年、家のアンチエイジングのためのメンテナンスリフォームを提唱。さらに、外壁サイディング廃材の有効的な利用法を考えるNPO法人外装エコロジーシステム理事長を務めるなど、SDGsにも積極的に取り組む 。

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