4年間のプラトニックな関係を経て、男女の関係に
その再会から4年間、彼女は3~4か月に1回開かれる美味しいものを食べる会の常連になる。今、外資系の企業で役職がついている彼女は、息子を育てながら働くシングルマザーとして自立しており、比較的豊かな生活をしているようだった。
4年間のプラトニックな関係を経て、男女の関係になったのは、最近だ。嶋田さんにどうしてそうなったのかを何度も聞くと、「タイミングかな……」と答えた。
「美味しいものを食べる会の他に、2人で半年に1回くらい飲みに行っていた。仕事の話ができる女性はいいよね。いつもは表参道や代々木上原あたりが多かったんだけど、何かのときに、下町エリアのラブホテル街の中にある有名な居酒屋に行くことになり、お店を出たらホテルだらけ。素通りできず、入ってしまったよね。知り合いに会う心配もない場所だったし、あれはホント、タイミングだった」
お互いに10年以上、異性と関係を持っていなかったので、手探りだったという。女性は体型の変化を、男性は思い通りにならないことを恥じる。そこには“恥の共有”があり、それが心を癒したという。
「ガッカリされたら嫌だと思うから、いろんな知識や経験を総動員したよ。それって初めてのときと、似ている。まさかこの年で、あの感覚を味わえるとは思わなかった。今は楽しいけれど、女房にバレるのが怖いよね。あと数か月後に控えた定年も悩ましい。彼女はどうもカタガキが好きなようで、定年になった俺とまた会ってくれるのかな……と思う。自由に使えるお金も減るし」
嶋田さんは、今のところ定年後は、再雇用者として仕事をしつつ、友人がやっている日本の伝統文化を広めるNPO法人の活動を手伝うことになっているという。
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。