人は、家族を失う悲しみ、病気や怪我などの苦しみといった逆境にいつ立たされるかわかりません。名だたる画家たちも例外ではありません。逆境にも負けず画業に専念した画家、描かれた悲劇の主人公たち。しかし、その作品が放つ神の境地にいたるような神々しさ、吸い込まれるような美しい輝きは観るものを魅了します。
「悲運の画家たち」と銘打った展覧会が、京都・嵐山の隣接する2館で同時開催されています。(2021年1月11日まで)
本展は、福田美術館を第一会場として「逆境にも負けず」をテーマに、嵯峨嵐山文華館を第二会場として「忘却にも負けず」をテーマに同時開催し、共通券で両館を観覧できます。
本展の見どころを、主催の福田美術館学芸員、阿部亜紀さんにうかがいました。
「悲運の画家たち」は、福田美術館の開館1周年を記念する展覧会でもあり、画家の身に起こった悲運や画題として取り上げられた悲劇を切り口に、福田コレクションが誇る名品の数々をご紹介しております。
主な作品としては、尾竹国観の《文姫帰漢》。後漢の才女・文姫の数奇な人生の一端を描いたもので、第10回文展にも出品された大作です。鮮やかな配色、細やかに描き分けられた人々の表情にもご注目ください。
次に、市電に引かれて左足を失う悲運を経験した速水御舟による《露潤》。朝開き夕刻には早くもしおれて落ちてしまうトロロアオイの花ですが、この絵では上へ伸びた茎に数々の蕾が膨らみ、花の後に実が育っていく様子が巧みに表現されています。
また、渡辺崋山の《于公高門図》は重要文化財にも指定されており、蛮社の獄の際、公平な判決をした与力・中島嘉右衛門に対し、謝意を込めて制作したと伝えられています。
パノラマギャラリーでは、フランスのパリで活躍した画家、モーリス・ユトリロによる《ヴェジネのサント・ポーリーヌ教会》なども展示しております」
京都・嵐山の美しい景観のなかの美術散歩!!ぜひ足をお運びください。
【開催要項】
悲運の画家たち 逆境にも負けず/忘却にも負けず
会期:2020年10月24日(土)~2021年1月11日(月・祝)
前期10月24日(土)~11月30(月)後期12月2日(水)~1月11日(月・祝)
会場:福田美術館
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町13-16
電話:075・863・0606
https://fukuda-art-museum.jp
嵯峨嵐山文華館 京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11
電話:075・882・1111
https://www.samac.jp/
開館時間:両館とも10時から17時まで(最終入館16時30分)
休館日:両館とも火曜日、年末年始(12月29日~1月1日)
料金:HP参照
アクセス:HP参照
取材・文/池田充枝