取材・文/沢木文
仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。
【その1はこちら】
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今回、お話を伺ったのは小野健一さん(仮名・71歳)。私立大学法学部卒業後、大手の家電メーカーに勤務し、60歳で定年退職。その後、友人と会社を立ち上げ、コンサルタントとして活動をしている。
50歳を超えた頃から、20代の女性がキラキラして見えるようになった
63歳の時に、人生の自由を感じ、本当に自分が恋愛したい相手を考えた。その時に脳裏に浮かんだのは『女子大生』という単語だった。
「俺たちの世代にとって、『女子大生』って特別なんだ。そもそも、大学には女性が圧倒的に少なかった。今だから言えるけれど、当時はちょっと学生運動にも参加したことがあって、女子大生と恋愛という雰囲気ではなかった。大学時代にデートしたけど、ひどいもんだよ。わかりもしないマルクスの『資本論』を片手に、大音量のジャズ喫茶に行って、コーヒー飲んでハイライト吸って、彼女の下宿で慌ただしくコトを終える。お互い初めてでね。彼女はその後、ストーカーになって大変だったんだ」
文部科学省の調査によると、日本の女性の大学進学率は、昭和40年代は5%程度だったが、今は48%になっている。
「バブル期は、5人に1人が大学に進学していたんじゃないかな。当時は、女子大生がいかがわしい店で働いていることがニュースになったりもしていた。その時に興味はなかったんだけれど、50歳を超えた頃から、20代の女性がキラキラして見えるようになった。でも、デートしたって話が合わないことはわかるし、向こうから俺のところに来るのは、金目当てと言うこともわかっている。それでもいつかは、女子大生と恋がしたいと思っていたんだ」
そこで、小野さんは、出会い系サイトに登録する。
「でも、全然ダメ。女子大生と言うから会いに行ったら、元女子大生って感じの明らかに30代の女性が待っていたこともあったな。出会い系サイトをやめたのは、2回目の女性に会いに行ったとき、美人局に遭いそうになったから。食事中の彼女の会話や様子に違和感があり、ホテルに行こうとしたときに、『ここで私をおどしたら、君は犯罪者だよ』と言ったら、女の子が泣き出しちゃったんだよね。それで1万円を渡して、おひきとりいただいた」
その後、興ざめしてしまい、1年ほど、48歳の女性と恋愛を続けていた。
「彼女も十分若いんだけれど、こちらの体力が続かなくなってきていることがわかった。男性として機能はしても、運動ができないんだよね。男性機能については、さまざまなサプリメントや薬もあって、大々的に広告をしていたり、そういう記事もネットに溢れている。でも、運動について書いていることはほとんどない。やはり、持続的に体を鍛えていないとダメなんだと思う。でも、そんなことできないよね」
そして、64歳の時に、友人の経営者に誘われて、デートクラブに登録する。
【音大の女性を指名した。次ページに続きます】