取材・文/沢木文
仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。
【その1はこちら】
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今回、お話を伺ったのは元教師の篠原正一さん(仮名・65歳)。定年退職した3年後に、妻を乳がんで亡くす。娘から「彼女でも作ったら」と言われ恋活を始める。
結婚生活はうまくいき、穏やかな日々を過ごす。女性経験が少ない篠原さんの63歳からの“恋活”とはどのようなものだったのだろうか。
初めて参加したシニアの出会いのパーティーだったが……
「ネットで検索すると、シニアの出会いのパーティーがたくさんあり、まずはそこに参加した。地元にもあったけれど、やっぱり顔バレが怖い。教師ってどこでだれに見られているかわからないし。だから、東京が会場のところに申し込んだ。本気の婚活ではなく、食事会みたいなやつ。会場はそこそこ高めのレストランで、6対6だった。こっちは、同世代か少し若い程度の女性が来るのだと期待していったのに、30代の中国人女性が半数だったのには驚いた。あとは、明らかにお金目当てと言う人ばかり。こっちは恥を忍んで、勇気を出して参加したのに、これじゃだめだと思って早々に帰ってしまった」
教え子や教師仲間など女性は多い。しかし、「篠原先生、色ボケした」と噂が立つのは避けたかった。
「プライドが高いのかもしれないけれど、そう言われることに耐えられない。自分を変えるのと、今までの自分を捨てるのは別物だよ」
気持ちが恋愛に向いたとたん、再婚話も舞い込んできた。見合いのような食事会は、5回ほど行ったという。
「63歳って『まだ若い』と言われる年齢なんだよね。妻が亡くなったことを知った知人が、再婚話を持ち込んできた。ウチは共働きだったので、資産もあるし、年金も受給している。それに元教師というのは、結婚相手としてはブランドになるんだろうね。中でも印象に残っていたのは、高校生の息子がいる、48歳のバツイチ女性。ハイヒールを履いていて、あまりにも美人でびっくりしたよ。食事会の後、先方は大乗り気だった。それで、ちょっと調べてもらったら、すごい浪費家で借金があることが判明したんだよね。あのまま話を進めていたら、私の財産はなくなっていたし、娘たちにも迷惑をかけていた可能性がある」
シニアの恋愛は、慎重になるに越したことはないと語る。
「まだまだ若いと思いながらも、世の中的には若くない。10歳、20歳も年下の女性が自分のことを好きにはならないと思って、話を進めた方がいい。パートナーを間違えると、健康状態も悪くなり、財産も持っていかれるからね。入籍や同居を急ぐ女性もいたけれど、そういう人はお断りした。嫌われても上から目線でも、断るものは断った方がいい」
【写真SNSで見つけた最後の恋の相手とは……次のページに続きます】