取材・文/ふじのあやこ
家族との関係を娘目線で振り返る本連載。幼少期、思春期を経て、親に感じていた気持ちを探ります。(~その1~はコチラ)
今回お話を伺ったのは、都内にある自宅でウェブ関連の仕事をフリーでしている章乃さん(仮名・37歳)。富山県出身で、両親と6歳上に兄のいる4人家族。兄にベッタリだった母親は、大学進学で家を出た兄に代わり、章乃さんをより可愛がるように。専門学校進学を断念した時期には両親とあまり口を聞かない時期もあったものの、それも大人になるにつれて落ち着き、実家は居心地が良かったと振り返ります。
「優秀で自分のやりたいことがハッキリしていた兄と違って私はフラフラしていたし、親の反対を押し切ってまでやりたいこともありませんでした。兄とも仲は悪くなかったけど、小さい頃は兄に母親を取られたような気持ちがありました。それが、兄が家を出てからはなくなった。就職の時も家を出る考えはありませんでした」
居心地の良い実家を離れ、彼とともに上京を決意
就職後も程よく友人と遊び、両親との仲も良好。たまにお土産を買って帰ると嬉しそうにしてくれる両親を見るのが好きだったと振り返ります。
「就職してからが一番落ち着きましたね。会社で仲良しの子たちも真面目な子ばかりで、たまにご飯を食べて帰ったりするけど、22時台には帰っていました。週末は母親と出かけることもありましたし、家族3人で待ち合わせをして外食することもありました。それに、会社の最寄り駅においしいスイーツのお店があったんですが、それを買って帰った時は毎回とても喜んでくれて。お給料は兄に比べて全然少なかったけど、私のほうが親孝行なんじゃないかなって思っていましたね」
入社して1年後に入ってきた後輩社員と恋愛関係に。交際期間が2年になった時に相手が東京の企業に転職すると言い出し、章乃さんもついて行くことにします。親の反対にあわないように章乃さん自身も仕事を辞める前に東京での再就職先を見つけたと言います。
「彼とは結局上京して1年も持たずに別れてしまうんですが、きっかけはくれたと思っています。自分だけでは決断できなかったことだと思いますから。彼からは一緒に行きたいと言った時に、まだ結婚するつもりはないからちゃんと仕事を見つけること、それに一緒に住まないことを条件に出されました。年下なのにしっかりした男でしたよ。
私は彼の言いつけを守り、仕事をしながら就職活動をして、ウェブ関連の仕事をちゃんと見つけました。そして彼のことは内緒にして両親に上京の旨だけを伝えました。仕事がすでに決まっていることで両親からは大きな反対は受けませんでしたが、しきりに母親は『寂しくなる』と言っていましたね」
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