取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

「コロナ禍になって、母親との距離がより近くなったと感じるのですが、それが少ししんどくて。こんな気持ちを持ってしまっていることにも罪悪感がひどいです」と語るのは、章乃さん(仮名・37歳)。章乃さんは都内にある自宅でウェブ関連の仕事をフリーで行っています。

微妙なバランスを保ち、家族仲は保っていた

章乃さんは富山県出身で、両親と6歳上に兄のいる4人家族。不動産関連の仕事をしている父親とパート勤務をしている兼業主婦の母親の下で育ち、父親は章乃さんに甘く、母親は兄にベッタリだったという幼少期を過ごします。

「家族仲も夫婦仲も良かったとは思いますが、なんとなく親が兄妹でどちらをより可愛がっているのかがわかるというか、そんな一面がありました。例えば些細なことかもしれないけど、家で出てくる料理は私の好物よりも兄の好物が多かったけど、父親の仕事帰りのお土産では私が好きなケーキが多かった、とかですかね。母親とは夕飯の買い物を一緒に行ったり、2人で出かけたことも何度もあります。でもその時に覚えているのは、私の前で兄の悪口を言う母親のこと。兄とは年齢が離れていて、私は小さかったけど兄はすでに中学生で、そのぐらいになると男の子は母親と一緒に行動したがらなくなるじゃないですか。そのことについて、母親は私に向かってずっと文句を言っていました。確信があるわけじゃないですけど、兄を誘って断られたから私のところに来たんじゃないかなってずっと思っていましたね」

兄は母親の下を大学進学とともに離れます。兄が家を出てから母親はより章乃さんに執着するようになっていったと言います。

「兄が地方の大学進学で家を出たのは私が中学生に上がったとき。地方の大学へ行くことをずっと母親に反対されていたんですが兄は父を味方につけて、見事に大学に合格。兄が行ったのは国立大学の理系で、賢かったから父の後押しをもらえたんですよね。その時ぐらいから母親が私にベッタリになりました。中学に上がったばかりというタイミングもあったけど、今までちっとも見なかった学校の成績を確認するようになったり、小学校の頃からピアノを習っていたんですけど練習に付き合ってくれるようになったり……。当時はずっと兄に取られていた母親が戻ってきたと思って、うれしかったことを覚えています」

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