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主人の帰りを駅で待った忠犬ハチ公は映画にもなり、世界中で有名です。新潟県五泉市の忠犬タマ公は雪崩に巻き込まれた主人達を二度も救った、真の忠犬として、世界中にその名を広めた忠犬でした。

新潟駅構内のタマ公像(写真提供、忠犬タマ公委員会)

小柄な越後柴の女の子タマ

一度目の救助活動については昭和9(1934)年2月の新潟新聞に「雪崩の下から忠犬,主人を救ふ」と紹介され、二度目の救助に関しては昭和11年1月の新潟新聞で「二度目の殊勲、忠犬タマ公、人間以上」と華々しく書かれました。

タマ公は雌の柴犬で、現在の新潟県五泉市川内地区の暮坪で生まれ、同地区、笹目の刈田吉太郎氏が猟犬として譲り受けました。タマは他のきょうだいに比べると小柄で、猟には適さないと言われたのを引き取ってきたと、刈田氏は語っています。

血だらけの前脚で雪を掘り続けた

1934(昭和9)年1月、刈田氏はタマをつれてヤマドリ猟に出かけ、雪崩の被害に遭います。雪に埋もれた主人を救ったのがタマでした。被っていた菅(すげ)笠を食い破り、雪をかき出して、刈田氏は一命をとりとめました。しかし一緒に行った猟師仲間は帰らぬ人となりました。

写真提供、忠犬タマ公委員会

タマは両方の前脚で必死に雪を掘り、爪が折れて血まみれでした。自分の身体が傷ついても主人を救おうとしたタマは、忠犬として広く知られるようになりました。

さらにその2年後、刈田氏は二度目の雪崩被害に遭い、タマが再び主人を救いました。今度は主人だけでなく猟師仲間4名もタマによって救助されました。この事件は世界中に報じられ、米国政府はタマを忠犬として称えました。

今こそタマ公の教えが生きてくる

飼い主の吉太郎氏のひ孫にあたる、忠犬タマ公委員会代表の伊藤和幸氏は「私たちは子供の頃から忠犬タマ公の物語を通じてたくさんのことを学びました。タマを可愛がった主人、その主人を救ったタマ、愛情と信頼から生まれた『人と動物の絆』、雪崩の恐怖に負けず主人を救おうとする『あきらめない心』、戦時中に銅像を供出から守った人々の『優しい心』などです」とコメントしてくれました。

タマの偉業を偲び、地元である川内小学校と新潟市にある白山公園内には立派な銅像がつくられました。しかし白山公園の銅像は戦争の犠牲となり供出されてしまいます。一方川内小学校の銅像は地元の人々の思いにより供出を免れて、当時のまま地元の小学校に佇んでいます。その後再建運動が起こり現在では、新潟県内に小学校やJR新潟駅、白山公園、など6か所にタマ公の像が建てられています。

特に戦争中、タマ公の銅像の供出に反対することは、どれほどの勇気を必要としたことでしょう。タマ公を愛し、軍の力に屈せず命がけで守ってくれた地元の人々や関係者の存在を、タマ公は後世に伝え続けています。

タマは1940(昭和15)年、11歳で亡くなりました。現在の柴犬の平均寿命が15歳なので、まだ若い死でしたが、大好きな刈田氏の元、静かに眠るように亡くなったそうです。享年について、伊藤氏は「タマ公の誕生日やきょうだいの数など、いろいろな説があって、研究の余地はたくさんあるので、11歳という年齢は書き替えられる日が来るかもしれません」と教えてくれました。

写真提供、忠犬タマ公委員会

タマ公の功績により兼ねてより親交のあった神奈川県横須賀市の衣笠山公園では2017(平成29)年3月、忠犬タマ公慰霊祭が行われて、五泉市から銅像が寄贈されました。

ジャパニーズスモールサイズドッグと呼ばれた柴

タマ公は越後柴と呼ばれた柴犬で、縄文時代に飼育されていた犬がルーツであると考えられている、世界で最も古いDNAをもつ犬種です。ハチ公のアキタなどに比べると身体は小さく、日本犬の中で唯一の小型犬なので、海外では長い間、ジャパニーズ・スモールサイズ・ドッグと呼ばれていました。

タマに見られるような、高い知能と独立心をもち、主人の指示に忠実な気質は欧米でも高く評価され、世界中に愛犬家クラブが存在しています。

帰りを待ち続けたハチ公も素晴らしい忠犬ですが、二度も飼い主の命を救ったタマ公の存在もぜひ語り継ぎたいと、地元五泉市では忠犬タマ公委員会が地元企業の協力を得て、紙芝居を作成し県内の図書館や小学校へ配布して人気を集めています。

しゃべる紙芝居は動画がアップされていて、世界中にタマ公の偉業を伝え続けています。(https://www.youtube.com/watch?v=SfRmQx3aRmE

また、地元の小学校では毎年3年生がタマ公をもっと広めたいと学習発表会でタマ公ミュージカルを披露しています。

「コロナ禍で苦しむ今こそ、人々の心を打つ忠犬タマ公の物語を世界中の人々に知ってほしいと思っております。そしていつの日か忠犬ハチ公のように、映画館で出会える日が来れば……」と忠犬タマ公委員会代表伊藤和幸氏は語ってくれました。

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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